日本は最後の“黄金郷”――黒船カジノと国産カジノの戦いが勃発窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年06月03日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 安倍晋三首相が訪問中のシンガポールでカジノを視察した。

 秒刻みの超過密スケジュールのなかで40分もの時間を割いてご覧になったのは、ラスベガス・サンズが運営する「マリーナ・ベイ・サンズ」とゲンティン・シンガポールの「リゾート・ワールド・セントーサ」。ともに日本のIR(複合型リゾート)推進論者が「成功モデル」と位置付けている施設だ。

サンズ・シアター(公式Webサイトより)

 安倍さんはかねてよりIRを「成長戦力の目玉」と位置づけているんだから、まあ当然じゃんと思うかもしれないが、このタイミングで日本国のトップがこういう行動に出たという意味は大きい。

 カジノというと最近になってふってわいて出た話のような印象が強いかもしれないが、実は推進運動自体の歴史は古い。1990年代から一部の自治体では「カジノで景気回復」を合言葉にワーワーやっていた。その筆頭が「お台場カジノ」では元東京都知事の石原慎太郎さん、「基地移設跡地カジノ」では沖縄県知事の仲井眞弘多さんである。

 おふたりとも「特区」やら「沖縄振興特別措置法」を持ち出せばどうにか実現できるとふんでいたが、現実はそんなに甘くなかった。結果、カジノは「構想」だけが浮かんでは消え、忘れたころにまたささやかれるということが繰り返され、「日本のカジノ解禁は世界一ハードルが高い」というカジノ業者の共通認識が生まれたというわけだ。

 だから、安倍政権が「観光立国」を掲げてIRをやります、と宣言をしてもほとんどの業者がシラッとしていた。それをどうにか盛り上げようと、推進派の人々が「カジノ解禁はほぼ確実」と触れ回っていたわけだ。

 もしお時間のある人は過去のカジノ関連記事を見ていただきたい。ここ数年、「政府筋」や「自民党関係者」が国会のたびに、「IR法案が通るのはほぼ確実」みたいなことを言っている。もちろん、今国会前もそんな記事があふれている。

 しかし、今国会もフタを開ければ、法案成立は難しそうだ。こういうことばかりを繰り返していると、海外IRオペレーターの「投資熱」も冷めてしまう。それを防ぐには身をもって「日本はカジノをやります」という姿勢を世界に示すしかない。

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