「文脈(narrative)を創る」日本人になろうグローバルエリートから見た世界(4/4 ページ)

» 2014年06月26日 08時00分 公開
[原田武夫,Business Media 誠]
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 大切なのは文脈をとらえた上で、そこで提示されている問題(グローバル・イシュー)に対して「みんなで一致してどのように対処すればよいのか」という点に絞り、かつ誰も思いつかないようなアイデアを提示することである。そうすることで「あなたの議論はものすごく貢献した」との発言の後、大いに褒められることになり、「またぜひ、話を聞きたい」「コンタクトしてもよいか」ということになってくる。一度やってみればそれほど難しいことではないのだが、それでも多くの日本人が飛び込んではいないのが、この世界。今であればすぐに海の向こうの人々は「自分たちの仲間だ」と思ってくれ、それだけ発言力を得ることができる。

 本当の「グローバル人財」とは、こうした形で自ら創り上げていくものだ。決して「MBA」や、「CPA」、「TOEFLが何点以上だ」という世界ではない。そして何よりも、こうやってグローバル・コミュニティにおいて一個人として認められていくことほど、楽しいことはない。

 狭い国内に留まるのではなく、そこで蓄えられたエネルギーを爆発させるためにも、グローバルな大海原に出てみてはどうだろうか。世界はそれを心から待ってくれている。「あの日本人が何かを言い出したぞ」となれば、きっと皆聞く耳を持つ。さらにそうした本当の意味でのグローバル人財、すなわちグローバル・コミュニティにおいて、受け身ではなく、それを動かす力を持った文脈を創り出す日本人が一人でも多くなることで、一日でも早く「それでは日本でそうした議論の場を創ろうか」という機運が生じてほしいものだ。

 議論の土俵が我が国となれば、そこで紡がれる文脈はますます国際社会全体から注目される。そこで「国益」に基づいた主張を展開すればよい。その瞬間、我が国の国際社会における立場は見違えて輝いたものになってくるだろう。

 安倍晋三総理大臣一人が世界を漫遊し、スピーチをしてまわれば、日本が国際社会で改めて認められるわけではない。大切なのはあらゆる場面で、あらゆるセクターの様々な世代の日本人が“文脈”を創り続ける努力を国際社会において続けていくこと。それは岩を水滴で穿つことのように、最初は思われるかもしれないが、やがてその「文脈」は小川となり、大河となり、大海原を動かすに至るのである。

 積み上がる公的債務処理の問題を筆頭に、今後の日本が直面するであろう世界全体との激しいディール・交渉においても通用するこうしたグローバル人財を一人でも多く育てることこそ、急務なのではないか。

 ――私自身、国際会議・フォーラムにおいて出席するたびにその思いを強くするのである。

 (※先月、2014年5月にロシア政府に招かれて出席した「サンクト・ペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)2014」において、私も加わった議論の様子はこちらをご覧ください)。


著者プロフィール・原田武夫:

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役(CEO)

 東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に外務公務員I種職員として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。在任中は、6カ国協議や日朝協議等に多数出席した。「すべての日本人に“情報リテラシー”を!」という想いの下、情報リテラシー教育を多方面に展開。自ら調査・分析レポートを執筆するとともに、国内大手企業などに対するグローバル人財研修事業を全国で展開する。

 最新刊『世界史を動かす日本――これからの5年を迎えるために本当に知るべきこと』(徳間書店)を2014年5月19日に上梓。IISIA公式メールマガジンIISIA公式Webサイト


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