リクルートの最年少役員が語る、求人サイト「indeed」買収の舞台裏最終回・上阪徹が探る、リクルートのリアル(2/6 ページ)

» 2014年07月04日 08時00分 公開
[上阪徹,Business Media 誠]

病気で倒れ、そこで学んだこと

 出木場氏のキャリアは、カーセンサーの営業専属代理店から始まった。数年後に1000億円規模にまで達するじゃらんnetやホットペッパービューティーなどの日常消費領域の長を委ねられたのは、入社10年目だった。だが、この前の入社7年目、人生の大きな転機になったという出来事が起きる。病気で倒れたのだ。

 「十二指腸潰瘍でした。放っておくと穴があいて、腹膜炎を引き起こす。死に至る危険もあるんですが、その直前でした。40度の熱で倒れて、救急車で運ばれて、3週間入院。2日間、意識が混濁して目が醒めたらすぐに、担当医にこう言ったんです。『僕は会社ですごく大変な役割を担っている。僕がいないと会社が困る。いつ帰れますか? 早く帰れるようにしてください』」

 そうすると、担当医は激しく怒った。

 「お前みたいなヤツを治すのが、一番嫌いなんだ。見てみろ」

 視線の先には、まだ生まれて数カ月の娘の姿があった。

 「こんなお子さんがいて、奥さんもいて、あんた、死んでたかもしれないんだぞ。たまたま死ななかっただけだ。今は、いい薬があるから。十二指腸潰瘍というのは、痛みが出る。痛かっただろ。どうしてこんなに放っておいた。お前みたいなヤツは、治してもまた戻ってくる。そんなヤツを救うために、医者の仕事をしたくない。もう一度、ちゃんと人生を考え直せ」

 担当医の言葉を聞いた出木場氏は、どのように感じたのか。

 「ショックでした。しかも、ずっと休んでも会社は回ってた。あれ、意外と大丈夫なんだな、と。3週間、寝たきりですから、妻に図書館で哲学や宗教、歴史の本を借りてきてもらって、むさぼるように読みました。このときに思ったんです。ああ、もう死んでたかもしれないから、あとはロスタイム。ここから先は、本当に自分のやりたいこと、自分のいいと思うこと、世の中に貢献できることだけに時間を使おう、と」

 出木場氏が当時最年少の36歳で執行役員となるのは、この6年後のことだ。海外事業も含めた新規事業開発領域の担当となり、買収先企業の選定を進めた。自分が本当に気に入る会社を探した。米国を中心に、100人以上の社長に会った。その中に、indeedの創業者がいた。

 「お互いにビビっとくるものがあったんだと思います。ロジックじゃない。当時は英語はできませんでしたが、言葉は通じなくても『なんか、こいつのこと、好きだな』『この雰囲気、いいな』って、あるじゃないですか」

入社7年目、出木場氏は十二指腸潰瘍を患う(写真はイメージです)

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