会社の持ち主である株主は、その株式を他人に売ることができます。しかし、ちょっと考えてみると、それはとても難しいことであることが分かります。「○○っていう会社の株式があるんだけど、5万円で買わない?」――そう言われたとしたら、皆さんはどう思うでしょうか? ほとんどの人が、その場で「よし、買った」とは言わないはず。
もちろん、株主が自分の肉親であったり、十分信頼に足る人であれば話は別です。しかし、見ず知らずの人からこういう話を持ち掛けられたら、たいていの人は決断を見送るでしょう。なぜなら、その株式が5万円を出すだけの価値があるかを判断するためには、いろいろな情報が必要になるからです。
その会社が今どれくらい儲かっているのか、どれくらいの負債を抱えているのか、どういう経営者がどんな方針で会社のかじ取りをしているのか……それらの情報を入手しない限りは、株式を買うかどうかの判断はできません。もっというと、それらの情報を見ず知らずの人が提供した時に、その情報が「本物か否か」ということも、考えなければいけません。
ですから株主から見れば、自分の株式を売却するのはそう簡単ではない。一方、「株式を買ってみたい」と思っている人からしても、自分が安心して投資できる会社を見つけることが、難しいということになります。
そこで、一定の条件を満たした株式会社の株式については、その売買をある程度自由に行える仕組みを作ろうということになりました。それが「株式市場」であり、その市場に自分の会社の株式を売りに出せるようにすることを「上場」と呼ぶわけです。現在、日本には5カ所の証券取引所があり、それぞれの取引所に認可された銘柄が絶えず売買されています。
上場している会社は、自分の会社の経営状態をしっかりと定期的に公表しなければなりませんし、役員もしっかりとした立場の人を据えなければなりません。ある程度、しっかりと経営を推し進められる体制があり、なおかつその結果をしっかり情報公開できる状態にないと株式を上場できないわけです。そのようなしっかりした会社だけが上場しているからこそ、一般の投資家は安心して銘柄を選択することができるわけです。
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