JR九州の株式上場の要因は二つある。一つはもちろんJR九州の経営基盤が良好だからだ。ただし、鉄道部門ではなく、不動産や商業部門である。
JR九州は発足の2年後、1989年に「MJR」ブランドで分譲マンションの販売を開始。福岡都市圏を主に長崎、鹿児島、熊本に展開し、2014年3月までに74棟、4659戸を販売した。昨年(2013年)はとうとう九州内のマンション販売実績がトップになった。いまや九州最大のマンションデベロッパーである。ホテル事業においても、九州内主要都市や別府、屋久島など観光地に展開。2014年8月にはついに東京・新宿駅南口に「JR九州ホテル ブラッサム新宿」をオープンする。
JR九州のマンション事業部公式サイト。ブランド名は「MJR」
商業部門では九州エリアのファミリーマート、ドラッグイレブン、ユニクロなどとフランチャイズ契約し、手広く展開する。また、農業分野にも進出。2010年に大分県でニラの生産を始たほか、高級鶏卵「うちのたまご」ブランドを確立した。2014年7月付けで、グループ内4社の農業事業を集約した会社「JR九州ファーム」を設立した。
こうした新規事業の展開がすさまじい。JR九州の2011年の連結売上高は3300億円。そのうち鉄道収入は1400億円、鉄道以外の収入は1900億円とだった。中期経営計画では、株式上場目標の2016年度までに連結売上高3700億円を目指す。鉄道運輸収入は微増の見込みで、鉄道以外の収入を連結売上高の60%以上にするもくろみだ。
豪華クルーズトレイン、ユニークな観光列車など、赤字の鉄道事業に次々と起爆剤を投下する背景には、鉄道外収益という強力な背骨があったわけだ。
JR九州ホテル ブラッサム新宿のWebサイト
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