JR九州が株式を上場する目的の二つ目は、外的な要因だ。整備新幹線の建設前倒しの資金が必要だからである。JR九州の長崎新幹線もそうだ。しかし、主目的は北海道新幹線の札幌延伸と北陸新幹線の敦賀延伸である。地元の要望も強く、政府与党はこの2つの新幹線の建設を早めたい。その財源としてJR九州上場による株式売買益を見込んでいる。
JR九州が上場すると、なぜ整備新幹線の建設が早まるか。その理由は簡単だ。現在のJR九州の株主が独立行政法人の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」だからである。「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」は、整備新幹線の建設を担っている。つまり、JR九州が上場し、保有株を証券市場で売却できれば、整備新幹線の建設資金になる。
1987年に国鉄が分割民営化してJR各社が発足したときに、国鉄を精算する特殊法人として国鉄清算事業団が作られた。国鉄清算事業団はJR各社に対し「国鉄の資産を現物支給の形で出資した」という形を取った。そのため、国鉄清算事業団はJR各社の株主となった。国鉄清算事業団は国鉄の遊休地を処分して国鉄時代の累積債務を返還しようとした。国鉄清算事業団は時限立法に基づいていたため、1998年に解散。資産は鉄道建設公団が継承した。
鉄道建設公団は国鉄の鉄道路線を建設し、国鉄に貸し付ける事業を担っていた。整備新幹線の建設も鉄道建設公団の事業だった。2003年に政府の特殊法人改革の中で、海上輸送関連の運輸施設整備事業団と統合された。こうして、JR各社の発足時の株式は、新幹線を建設する特殊法人の資産となった。
かなり遠回りだけど、北海道新幹線や北陸新幹線を建設するために、指宿枕崎線が廃止の危機に陥ったとも言える。これもどうも納得いかない話である。
JR九州と国鉄清算事業団、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の関係(図:筆者)
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