川崎: 派遣法の話に入る前に、まず「派遣」という働き方について説明しましょう。総務省の調査によると現在、日本国内の労働者はおよそ5200万人です(2014年1〜3月期平均、参考リンク)。雇用形態は、大まかに正規雇用と非正規雇用の2つに分かれますが、派遣を含む非正規雇用はそのうち約38%、およそ1970万人となっています。
非正規雇用と聞くと、派遣というイメージを持つ人も多いと思いますが、派遣以外のアルバイトなどのパートタイム労働の方が多いのです。いわゆる「派遣」として働いているのは約115万人。全労働者のうち2%くらいです。
――ここで言う「派遣」というのは、人材派遣サービス(以下、「派遣事業者」)に雇用されて働く人という認識でよいですか?
川崎: そうです。派遣労働は雇用期間によって「一般派遣」と「特定派遣」の2種類に分かれます。特定派遣は「常用雇用」と言って、期間の定めのない雇用契約を結んでいる労働者、つまり正社員雇用と1年以上にわたって雇用される、または雇用される見込みがある場合とがあります。一般派遣には最短期間の規則はありません。
――なんとなく、一般派遣は事務、特定派遣はSEというイメージを持っていたのですが……。
川崎: 特定派遣全体で見れば、確かにSEの比率は比較的高いですが、SEでも一般派遣の人はいます。一般派遣と特定派遣の違いは、常用雇用※かどうか、つまり雇用期間が1年を超えるかどうかで分けることができます。逆にどちらの場合も、派遣先が派遣社員として受け入れられる最長の期間は3年と決まっています。
なお、3年を超えて同じ業務に就かせる場合は、正社員として雇用しなければなりません。正社員として雇用しない場合でも、その同じ業務については、新たに派遣で人を受け入れることができなくなります。
ただし、派遣法内で指定されている28種類の業務は、例外的に最長3年という派遣期間の“縛り”がなくなり、派遣として無期限で受け入れられます。28種類の業務とは、ソフトウェアの開発や秘書、財務処理、通訳といった専門的な知識や技術などを必要とするものです。
――分類や例外が多く、確かに分かりづらい気がします。
川崎: この特定派遣と一般派遣の違いは、派遣サービスを運営する派遣事業者にも影響があります。一般派遣を扱う事業者は、事業を展開する際、事務所の広さや資産といった数々の条件をクリアした上で、厚生労働大臣の許可を受けなくてはなりません。
許可が下りるまで3カ月ほどかかり、さらに下りたあとも厚生労働省の職員が定期的に視察します。こうしたシステムから、一般派遣は「許可制」と言われています。短期の派遣労働も扱いますから、彼らの給料をしっかりと支払える能力があるかどうか、という点を(厚生労働省が)確認するという意味合いが強いです。
一方、特定派遣を扱う事業者は、許可が必要ありません。厚生労働省へ届け出るだけで事業を開始できるのです。審査などもほぼないことから「届け出制」と言われていますね。1年にわたっての雇用を保証するという性格があるため、一般派遣に比べて規制がゆるくなっていますが、行政の目が及びにくく、トラブルが起きるケースがありました。
――改正法案では、そういった問題は解決されるのでしょうか?
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