出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
また、戦争が始まろうとしている。
先日、英国南西部のウェールズでNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議が行われた。ウクライナ情勢への対応と、イラクとシリアで拡大するイスラム過激派組織「イスラム国(ISIS=Islamic State of Iraq and Syria)」への対応を議論していたのだが、特にイラク情勢について非常に重要な発表があった。イラクですでに散発的な攻撃を行っている米国を中心とし、ISISとの戦いで核となる“中核的連合”が固まったのだ。
これは本格的な戦闘に向けた重大な一歩だと言える。この中核的連合は米国、オーストラリア、イギリス、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、トルコの10カ国だ。攻撃はトルコを拠点として行うことになるが、バラク・オバマ米大統領は、ISISに勝利するのに2〜3年はかかると語っており、イラクとシリアがこれまで以上に激しい戦場になることは間違いなさそうだ。
今やISISは欧米を中心とした10カ国が連携して戦うほど強大になっており、今後もさらなる拡大が懸念されている。ただ、ISISの勢いを懸念しているのは何もこうした世界の国々だけではない。これまで世界を震撼させてきた国際テロ組織「アルカイダ」もまた、その地位を脅かされており、ISISの拡大を懸念していると指摘されている。実際にアルカイダは、ISISに対抗心を燃やしているふしもある。
そもそも、ISISの拡大ぶりはどれほどのものなのか。以前、このコラムでも触れたが、ISISは制圧した地域で銀行などを手中に納め、イラク軍武器庫などから大量の武器を手に入れるなど力を増大させている。
イラク北部の油田も大小数多く制圧しており、トルコの通信社が報じたところでは、欧米の外交官がISISは石油をイランやトルコ経由でブラックマーケットに売りさばいているという。「イスラム国」と名乗るだけあって、産油国家ばりに稼ごうとしているようで、現在Webサイトでエンジニアを募集しているという話も出ている。
また、欧米に対する憎悪をアピールするのにも長けている。米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏が斬首された(参考記事)のがまだ記憶に新しい9月2日、今度は米タイム誌の米国人記者であるスティーブン・ソトロフ氏の斬首動画を公開した。さらにその後、ISISと敵対するクルド人戦闘員の処刑の様子も公開し、次はシリアで難民支援をしていた英国人を殺害すると予告している。ISISの残忍ぶりは、あっという間に世界の注目を浴び、米国務省の報道官に「吐き気を催す」とまで言わしめた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング