第4回 「iBeacon」と「NFC」のちょっとした誤解をひもとくビジネスパーソンが理解しておくべき、新時代のキーワード(3/3 ページ)

» 2014年09月26日 08時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),Business Media 誠]
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iBeaconは、NFCを駆逐する? という誤解

 さて、iBeacon機能に関してよく聞かれる話に「iBeaconはNFCの代替となるのか」「両者はライバル関係なのか」がある。こちらは、互いの技術の性質を理解すると「誤解」であることが分かると思う。

 iBeaconとNFCの特性の主な違いを以下にまとめた。

iBeaconとNFCの特性の違い iBeacon NFC
通信範囲 数センチ〜10メートルほど 数センチ以内
通信の対象 1対多 1対1
タグ/モジュールの駆動(クライアント側) 外部電源が必要 外部電源は不要
セキュリティ

 両者は「補完関係にある」というのが多くのサービス関係者らの思いだ。それぞれに向き不向きがある。例えばNFCは、iBeaconの課題である「セキュリティ性」をカバーできる。iBeaconは、他の技術を組み合わせて課題を補いながら、さまざまな方向性を模索している。これが現状だ。

 iBeaconの通信範囲は半径10数メートルまで(設定によって通信距離の微調整は可能)。一方で、NFCは非接触通信ながらもリーダーと端末(もしくはNFCタグ)を数センチ以内の距離まで近付けて使う。“タッチする行動”がそれに当てはまる。NFCは「自身が使う」ことを前提にした行動で示して通信するのに対し、iBeaconは「受け身で情報を取得できる」という違いがある。

photo NFCでは1対1での近接通信しかできないのに対し、iBeaconであれば半径10数メートルという範囲内のすべての端末に対して同じ信号情報を一斉送信できる

 実際の用途では、「小売店のPOSで、スマホをかざして支払いする」「駅で改札を通過する」といった用途にはNFCが向く。一方、「店の近くに来たら、最新情報が入手できる」「美術館で部屋を移動すると、そこに応じた個別の説明が流れてくる」「目的の商品へのおおよその場所を示してくれる」といった用途にはiBeaconが向く。iBeaconで客を店内に誘導しつつ、実際の決済はNFCにて、あるいはアプリ内で完結させる。このあたりが手堅いパターンだ。参考までにiPhone 6/6 Plusで使えるアップルの新サービス「Apple Pay」も、かざして支払うサービスなので、決済の実手段にはNFCを利用する。

 「タッチして決済」の仕組みは、おサイフケータイやIC乗車券(Suica)などを中心に、日本では多くの実績があり、すでに広く普及している。これが一朝一夕でiBeaconで置き換わることは当面ないと思われる。

photo Appleが公開したデモ動画でのApple Pay。iPhoneにあらかじめ登録されたクレジットカードの決済情報をNFC通信でPOSの読み取り端末に送信して決裁する。登録されたTouch ID(指紋)で認証を行うのでPINコード入力やサインは必要ない

NFCはカード媒体でも使える

 もう1つ、意外と忘れられがちだが、NFCの仕組みはスマートフォンだけでなく、普通の非接触カード媒体(IC定期券やクレジットカードなど)でも使える点が強い。iBeaconはクライアントにも電源のほかに、それを制御するアプリのような仕組みが必要となる。どうしてもスマートフォン、あるいはタブレット、スマートウォッチのような、携帯型かウェアラブルデバイスでの利用が中心となる。このあたりも、NFC(や、おサイフケータイ)の仕組みは当面置き換わらないと思う理由の1つだ。

 ちなみに、現状のビーコン発信器は「偽装が比較的簡単に行えてしまう」弱点がある。本来その場所にはいないのに「同じ信号を発する“偽”のビーコン発信器」を手元に設置して“アプリ”をだまし、「本来は来店しないと得られない来店ポイント」をだまし取ったり、あるいはニセのiBeacon信号で他のユーザーのアプリに誤動作を起こしたりと、さまざまな悪用も、少し考えただけで何個か思いつく。こうした行為を防ぐため、例えば「来店ポイントの付与はNFCで」などと併用したり、「(耳には聞こえない)超音波パターンを使って実際の来店をダブルチェック」したりと、さまざまなアイデアもあり、すでに導入例もある。

 いずれにせよ「BeaconがNFCに取って代わることはない」、というのが筆者の考えだ。



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