出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
9月25日、ニューヨークの国連本部で行われた国連総会で安倍晋三首相が一般討論演説を行った。安倍首相は国連加盟以来の日本による貢献を強調し、国連改革を実現して、日本が常任理事国入りする意思を表明した。
今回の安倍首相による国連での演説を世界はどう報じたのか。欧米の大手メディアは、安倍首相が中国と韓国との関係改善を求めたことや、エボラ出血熱への対策を強調したことなどを報じている。また日本の英字紙では、内閣改造で女性閣僚が増えたことを評価したUN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関、参照リンク)のプムズィレ・ムランボ=ヌクカ事務局長のインタビューなども報じられている。
国連総会によって安倍首相と日本に関する報道が増える中、それに関連して日本の「ヘイトスピーチ」について報じた記事もいくつかあった。日本への注目度が普段よりも高まったタイミングで報じられたこれらの記事は、今、世界の人たちが日本について何を“知らされている”のかを知るいい機会だ。ここ最近で掲載された2つの記事を紹介したい。
まずは英エコノミスト紙の記事(参照リンク)だ。「政治家たちは、2020年にオリンピックが行われるまでに非日本人、特に朝鮮民族に対する『言葉による虐待とあからさまなヘイトスピーチを抑える』という圧力にさらされている」と指摘する。日本には帰化していないコリアンが50万人おり、“歴史的に日本に敵視されてきた人たち”としている。
同紙は、国会も裁判所も対応に向けて動きを見せていることに触れ、現在の日本でヘイトスピーチ騒動が盛り上がっている理由として、次の3点を挙げていた。まずは歴史問題が原因となっている日韓の緊張関係。次に北朝鮮の日本人拉致問題。そして3つ目は、2012年に再登板した“ナショナリスト”である安倍晋三首相だという。
自民党は国外の日本に対するイメージを改善する必要性を分かっているものの、最近、山谷えり子・国家公安委員長兼拉致問題担当相が在特会(在日特権を許さない市民の会)の関係者と写真に収まっていたことなどが明るみに出るなど、それもうまくいっていないと伝えている。
非常にコンパクトにまとまった記事で、淡々と事実を述べており、日本人から見ても違和感なく読める新聞らしい仕上がりになっているところは評価できる。ヘイトスピーチが盛り上がった理由は私も同意するところだ。ただ1つ付け加えるとすれば、インターネットというテクノロジーが、点在していたであろう人たちを結びつけて集団を作り、過激化させた部分があると感じている。
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