値段は競合の2倍――それでもカシオの電卓がインドで売れる、2つの理由CASIO発! 日本で買えない、世界のヒット商品(前編)(2/3 ページ)

» 2014年10月16日 07時45分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

欧米と違う、インド特有の桁表示

 お金など桁数の多い数字を表示する場合、アラビア数字を使って数字を表記しているのは同じでも、世界的に見れば地域によって表示の仕方が微妙に違う。

 英語圏では3桁ずつカンマで区切っていくのが普通だ。しかしインドやバングラデシュなど南アジアでは、独特の桁の区切り方をする。下の図を見てほしい。千の位が3桁区切りなのは英語圏と同じ。しかしその次からは2桁ずつ区切っていくのだ。10万は1ラック(Lac)、1000万は1クロール(Crore)と呼ぶ。つまり下図では、一番上は「テンクロール」、二番目は「ワンハンドレッドクロール」と現地の人たちは読むことになる。

 こうした違いは、インドだけではない。たとえば欧州では、米国と同じく3桁区切りだが、カンマではなくピリオドを使うことが多い。また日本では、米国同様に3桁区切りが使われているが、本当は数字は4桁で区切ったほうが読みやすい。1,0000=1万、1,0000,0000=1億、以降カンマを増やすごとに、1兆、1京となる……といった具合だ。

インド特有の桁表示。一番下だけが3桁区切りで、その後は2桁ずつ区切っていく。ヨーロッパでは3桁区切りは同じだが、それを示すのにカンマを使わず、ピリオドを使うことが多い

 インドの人たち、特に商売をしている人たちは普段、ラックやクロールを使って表示した数字に慣れている。しかし電卓の表示は欧米方式の3桁区切り。「電卓を使うときだけ桁区切りが違うのは不便だ」という声を聞いたカシオが発売したのが、MJ-120Dだった。

 MJ-120Dは、「DIGIT(桁)」ボタンを押すことにより、欧米式の3桁区切りと、インド式の桁区切りを切り替えて数字を表示できる。そのため「数字が読みやすい」「使いやすい」と好評を博したのだ。

桁区切りを切り替えて使えるMJ-120Dは、インドの人たちに「使いやすい」と好評

インドの電卓には必須?「検算機能」

 日本では電卓を使うというと経理などのイメージが強いが、インドでは意外な使われ方をしている。インドでは店舗のレジスターが普及しておらず、レジ代わりに電卓を使うことが多いのだ。支払いの時、客が購入した商品を足して合計金額をそのまま見せたり、あるいは1日の営業が終わって店を閉めたあと、売り上げを確認するために電卓を使って計算したり……といった使い方をするのだという。

 こういったときに活躍するのが、「検算機能」(製品名の「CHECK CALCURATOR」はここから来ている)。これは、計算結果が出たあとに、入力した数字を順に出せるという機能だ。例えば「10+20+30+40=100」と計算した後で、検算(CHECK)ボタンを押していくと、順番に「+40、+30、+20……」と表示されていくのである。

 日本の電卓だと一部の製品にしか搭載されていない機能だが、インドの電卓ではこれが必須。客に「金額をごまかしているのではないか」と文句を言われた時にさかのぼって数字を見せたり、売り上げの計算をしたときに文字通り検算に使ったり……という使い方が一般的だという。

 これだけニーズが強い検算機能に目をつけたカシオは、MJ-120Dを「検算できるステップ数が業界最多」だと売り出した。多くても99ステップが主流だったところに、150ステップ戻れる機能を搭載したのである。

 現地の人たちに見やすい桁区切り、そして「検算のステップ数が多い」というメリットは分かりやすく、MJ-120Dは売れ筋の電卓に比べて約2倍の価格であるにも関わらず、現地の人たちに支持された。現在ではMJ-120Dと同じ機能を備え、もっと大型で価格も高い電卓も展開。こちらもインド市場でよく売れているという。

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