特集「made in Japan:世界で売れてる、日本発のヒット商品」では、世界で愛されている日本製のヒット商材について、詳しい記事でお伝えしている。
今回紹介するのは、そんな日本発のヒット商材の中でもちょっと変わったモノだ。カシオ計算機が日本で企画して製造し、海外でヒットしているのだが、日本では売られていない……という商品である。2商品あるので、前後編に分けて紹介していこう。前編となる今回は「電卓」の話。
世界中どこでも使われている「電卓」。全世界で毎年、約2億台ずつ毎年売れており、成長市場である。社名が「カシオ計算機」であることからも分かるとおり、カシオにとって計算機、つまり電卓は原点ともいえる商品である。カシオは現在でも年間5000万台程度、これまでに累計10億台以上の電卓を世界中で製造・販売してきた。
だが電卓というのはそうそう買い換えるものではない。デジカメや腕時計などとは違い、新しい機能を搭載したハイエンドモデルやかっこいいデザインの新商品が出たからという理由で電卓を買い換える人はまずいないだろう。実際、日・米・欧といった先進国では電卓市場は成長が止まっており、ほぼ横ばい。そんなわけで、カシオでは成長市場である途上国で電卓を売るべく、海外市場に力を入れている。
しかし、電卓はそれほど高い技術力がなくても作れる製品だ。実際、どこの途上国に行っても、それぞれの物価に合わせて現地メーカーが作る安い電卓が販売されている(粗悪品であることも多いらしい)。現地メーカー製の電卓に比べると、カシオの電卓は高い。しかし、粗悪品に合わせて値段を極端に下げた安いものを売るわけにはいかない……そこでカシオがとったのは「現地のニーズをヒアリングし、その国ごとに標準化する」という方針だった。
カシオでは、南米やインドネシア、ロシア、中国など、その国ごとのニーズを調べ、現地のニーズに合った電卓を販売しているという。その中でも特に最近よく売れているという、インド向け電卓について取材した。
カシオがインドで電卓を売り始めたのは1980年代のこと。かなり早い時期からインドに進出していたので、知名度は非常に高く、電卓を「CASIO」と呼ぶ人もいるほど。ニセのCASIOロゴをつけた類似品も多数出回っている。しかし本家カシオの電卓は、現地で一般的に売られている電卓に比べると値段が高いため、長い間販売面では苦戦が続いていた。
カシオ製電卓の売り上げが急増したのは、2010年に、ある新商品を投入してからだ。それまでは年間30万台程度しか売れていなかった電卓が、2010年には50万台を超え、その後も販売数を伸ばして、2013年にはついに100万台以上売れたという。
その新商品とは、「CHECK CALCURATOR MJ-120D」(以下、MJ-120D)。インドで売れ筋の電卓は日本円で300円程度のものが主流だそうで、MJ-120Dの390ルピー(約690円)という値段は、インドの人たちから見るとかなり割高だ。それでもMJ-120Dが売れたのは、2つのポイントがインドの人々に支持されたから。1つはインド特有の桁(けた)表示に対応したこと。そしてもう1つは検算機能のステップが競合製品と比べて最多だったことだ。
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