写真で見る新型ロードスターのメカニズム池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)

» 2015年02月20日 09時00分 公開
[池田直渡Business Media 誠]

エンジン・カットモデル

新型ロードスターのエンジン・カットモデル

 ロードスターは、日本ではSKYACTIV-G 1.5のガソリンエンジンを搭載する。このユニットは可変バルブタイミング機構とシリンダー直噴によって高効率を狙ったエンジンだ。

 このエンジンの可変バルブタイミングとは、爆発圧力をより長く受け止めて無駄にしないための仕組みで、エネルギーを無駄にしないことが目的である。シリンダー直噴は、吸気行程でガソリンを霧吹きして蒸発させることによって空気を冷やして沢山空気を取り入れる仕組みだ。燃焼室内での気流を上手にコントロールするためにピストンの上面は複雑な形状になっており、これによって渦を作り、燃料が燃えやすい状態にしている。

 こうした仕組みによって、スポーツカーであっても燃費と環境性能に優れたクルマにすることが狙いだ。

 エアコンのコンプレッサーは旧来のベルト駆動が用いられている。電動コンプレッサーにすれば燃費の改善ができる余地がある。このエンジンは基本設計が1.3と共通で、デミオなどにも使うもの。そのため、おそらくコストの制約上、電動化できなかったのだろう。

シャシー上面

新型ロードスターのシャシー上面

 オープンボディのクルマには当然だが屋根がない。屋根がないシャシーに剛性を持たせるのは難しい。シャシー上面図を見ると、そこをいろいろ工夫していることが分かる。

 複雑な形状で立体的に構築されているのがAピラー付け根部分だ。エンジンルームと車内を隔てる壁をバルクヘッドというが、このバルクヘッドと車両両端の敷居、そして前後に伸びる背骨のようなフレームとフロントサスペンション支持部を上手く結合させ、立体的に構成することで頑丈にしようとしているのが分かる。

 前輪後ろ側には力学的に丈夫な三角形の構造があり、背骨が斜め左右に分かれる部分でも三角形が構成されている。

 また後ろ側は、リア・バルクヘッドを中心に強固に構成されており、これと前後を結ぶフレームが組み合わされる。ただし、フロントでは背骨部が大きく強度を受け持つ仕組みなのに対して、後ろは左右とセンターがほぼイーブンに強度を受け持っている。これは背骨がバルクヘッドより後ろに伸びていないためで、リアは両サイドのフレームの重要度が上がっていると考えられる。

 シートの下で左右に渡されるサイドメンバーは、側突時に乗っている人を保護するための部材。この高さを抑えないとシートの設置位置が高くなってしまい。車高も含めたボディ全体に大きな影響を及ぼすことになる。

シャシー下面

新型ロードスターのシャシー下面

 シャシーの下面でまず注目すべきは、ステアリングギアボックスがマウントされるメンバーの位置だ。前輪の直前の良い位置にレイアウトできたのは、エンジンの搭載位置を後ろにぐっと下げられたおかげである。そうでなければこの部材がもっと前進して、タイヤとギアボックスを結ぶタイロッドが長くなり、たわみが発生しやすくなる。

 またフロントダンパーのトップマウントは、上下のフレームを直線的に結んだ無駄のない位置に設けられており、強度を出しつつ軽量に仕上げやすくなっている。

 センタートンネルの開口部を補強するプレートはボディのねじれを止めるために重要な役割を果たす。このプレートもねじの締結部を直線的に結ぶ効率の良い形状にデザインされている。

 リアダンパーのトップマウントはリアのメインフレームに寄り沿う理想的な配置だ。

ドライブトレーン

新型ロードスターのドライブトレーン

 ステアリング・ギアボックスはラック&ピニオン式。パワーステアリングのアシスト機構はそのギアボックスに取り付けられる。ステアリング・コラムに付く方式よりドライバーの違和感はない。運転時のフィーリングを大事にしたいスポーツカーにとって大事なポイントだ。

 シフト・ノブはギアボックスからダイレクトに伸びている。ケーブルを経由して取り回さなくてはならないFFに比べ、操作感も当然ダイレクトになる。FRレイアウトの重要な美点の一つだ。

 トランスミッションとデフの間はトラス型に肉抜きされた補強板でつながれている。これはミッションとデフの間のねじれを防止してエンジンが出した力を逃がさずに後輪に伝えるための部材で、ドライブトレーン全体のタイト感を生み出すための重要な補強だ。なお、補強板は左側のみに取り付けられている。

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