上面透視図の項でも説明した通り、フロントサスペンションのアッパーアームは大胆に肉抜きされたアルミ製で、タイヤの横方向の位置決めをしっかりとさせている。
ばねは軽量化のため巻き数を減らしている。当然巻き数の多いものと比べてばねの長さあたりで受け持つ荷重が大きくなるのでばね定数の精度管理はより厳しくなるはずである。そのマイナスを覚悟しても軽量化をしたかったことがよく分かる部分だ。
複雑な形状のハブキャリアは、無駄な部分を出来るだけそぎ落として軽さを追求しつつ、剛性を高める工夫がなされている。
ロワーアームは前後の取り付けスパンを大きくとった形状。フロントサスペンションの前後方向の位置決めはこのロワーアームが受け持つ。強い曲げ荷重がかかるためアッパーアームほど肉抜きをしていない。フロントサスペンションのキーとなる部材だ。
ブレーキ・キャリパーも強度に配慮しながら無駄を削っているように見える。ロードスターの場合、超高速からの制動を考える必要はないため、むやみにブレーキのグレードを上げるよりも軽量化とフィーリング向上をメインに考えていると思われる。
ハブキャリアはフロント同様、複雑な形状で軽量化と高い剛性を両立している。
サスペンションはハブのセンターより前側に寄った位置に、アッパー、ロワーの2本のメインアームで横方向の位置決めをし、前後斜めから各1本ずつのアームで前後方向の位置決めをしている。
前後の斜めアームはできるだけ長さを稼いでストローク時にハブを引っ張ってトー変化(タイヤのつま先が開いたり閉じたりする動き)が起こりにくい設計になっている。またこのアームの長さを長くすることによってサスペンション全体の取り付けスパンを広くとることができ、剛性が上がるメリットもある。そのためにフロント側のアームは、ロアアームと交叉して後ろ側でハブを支えるレイアウトになっている。
駆動力によるデフの回転を止めるためにデフとフレームのマウントも広い取り付けスパンが設定されている。
新型ロードスターのメカニズムを見ていくと、とにかくフレーム、サスペンション、ドライブトレインをしっかり位置決めして余計な動きをさせないように留意していることがよく分かる。
タイトで一体感のあるドライブフィーリングを実現するために、できることを一生懸命やっていることが伝わり、好感が持てる。少なくともメカニズムを見ている限りは、実際に運転したとき期待外れになるようなことはなさそうだ。
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