そう聞くと、「まあバターが足りないんだからバター風マーガリンが売れるのは当然でしょ」と思うかもしれないが、ちょっと前まではマーガリンがバターをうたうなんて商品はありえないことだった。バターをブレンドした商品は過去にもあったが、純粋なマーガリン類がバターの名をかたってはいけないという“暗黙のルール”があったためだ。
それを説明するためには、長きに渡るマーガリンとバターの戦いの歴史を振り返らなくてはいけない。そもそも、マーガリンは「バターの代用品」として生まれた。
ナポオレン三世が普仏戦争(ふふつせんそう)の時、バター不足に見舞われたので「代用品」を募集したところ、牛脂に牛乳を加えて乳化冷却して類似品を作ることに成功。その工程でできる脂肪が真珠に似ていたことから、ギリシア語の真珠(マーガライト)からマルガリンになった、といわれている。
そんな「代用品」が日本に初めて入ってきたのは1890年。バターの後を追うように入ったのである。それからほどなく国産マーガリンの製造も始まって、ビスケットや洋菓子などに練込用としての用途が増えてきたが、「代用品」という立ち位置は変わらなかった。実際に、農商務省はマルガリンを「人造バター」と表示することを義務づけている。
しかし、昭和に入ると、そんな「本物と偽物」という関係性に大きな変化が訪れる。安価な「人造バター」の需要が増えて、バターに迫るほどの生産量となってきたのである。尻に火がついたバター業界はすぐにアクションに出た。1934年、中央畜産会総会は、以下のような決議をだして、帝国議会に提出すると言い出した。
(1)人造バターには絶対バターの名称を使用することを禁止する
(2)人造バターに純良バター類似色の着色を禁止する
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