寝台特急北斗星に乗り続けた画家、鈴木周作さんの「これから」杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

» 2015年03月13日 07時25分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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 私は絵に詳しくないけれど、鈴木さんの絵は柔らかな印象で、題材への優しさに満ちている。社長さんたちがその絵を見たら、しかも自分が仕事で関わる電車が描かれていたら、とても嬉しかっただろう。こうして、えちぜん鉄道と沿線地域の人々との付き合いが始まった。それはまるで恋だ。

 「私と絵のモチーフとの関わり方は、結婚型と遠距離恋愛型です。札幌市電は結婚型。近くにいるのがあたりまえになるような身近な存在、自然体で安心して見られる感じ。えちぜん鉄道は遠距離恋愛型。距離の溝を少しでも埋めようと頑張る気持ちがモチベーションになっています」

 22歳で北斗星に飛び乗ったあの日から20年。北斗星に乗り続けて生涯の仕事と住処、伴侶に巡り会い、そこから新しい縁がつながった。鈴木さんにとって、北斗星はいつまでも特別な存在だ。北斗星に乗車するたびに、絵の資料として1000枚以上の写真を撮ったという。それだけの思い出を題材として、鈴木さんはいつでも新しい北斗星の絵を描ける。その絵を見て、私たちも新しい北斗星に出会える。同じことは札幌の路面電車にも、えちぜん鉄道にも言えるし、これから見つかる新しいテーマにも言えるのだ。それはとても楽しみだ。そして、すべては北斗星の導きであった。

上が鈴木さんの著書。下の2冊が画家専業を決心させた絵本
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