東海道新幹線のスピードアップはまだ終わらない。さかのぼって2009年11月、JR東海は名古屋で「高速鉄道シンポジウム」を開催した。米国の高速鉄道プロジェクト関係者、日本政府関係者、大学や企業の関係者のほか、米国、英国、インド、マレーシア、インドネシア、エジプトの在日大使館関係者を招き、新幹線とリニアモーターカーの技術力や安全性をアピールした。その夜、出席者をN700系に乗せて東海道新幹線の米原〜京都間を最高時速330キロメートルで走らせている。
米原〜京都間は1991年に300系車両が最高時速325.7キロメートルを達成している。1996年には試験車両「300X」が最高時速443キロメートルを達成した。この区間はほぼ直線で、最新型のN700系にとって時速330キロメートルは余裕の走りだっただろう。最高速度の運転時間は10分程度だったと思う。試乗した来賓諸氏には好評だったようだ。当時、この試乗会と記録は海外へ新幹線を売り込むためのデモンストレーションだと思われていた。しかし、JR東海は本気で東海道新幹線のスピードアップをもくろんでいたようだ。
2013年12月19日、JR東海の山田佳臣社長(当時)は、定例社長会見の場で、2015年のダイヤ改正に向けて東海道新幹線の最高時速300キロメートル運転を目指す考えを示した。この日の会見内容は、翌2014年のダイヤ改正と、東海道新幹線の新型保線車両の導入、東海道・山陽新幹線運転管理システムの取り替え工事の完了についてだった。実際の2015年ダイヤ改正では最高時速285キロメートルにとどまっているけれど、これらの設備投資は最高時速300キロメートルへの布石といえる。当時の報道では、東京〜新大阪間を2時間10分台にする目標だった。
仮に米原〜京都間のみで最高時速300キロメートル運転が実現したとしても、短縮できる時間は時速285キロメートル時代にくらべて3分程度だ。それでもJR東海はチャレンジをやめない。リニアだけではなく、新幹線もスピードアップ。安全性を確保しつつ、スピードを上げ、定時性を保つ。なぜなら、安全、高速、定時性は鉄道のサービスの根幹だからだ。
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