ストレスチェック義務化、注意すべきポイントとは?従業員50人以上の事業所はすべて対象(3/4 ページ)

» 2015年05月22日 08時25分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 ただし、この職業性簡易ストレス調査票については、2014年12月15日に開催された「第5回ストレスチェックと面接指導の実施方法等に関する検討会及び第5回ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取扱い等に関する検討会」の議事録(参照リンク)において、調査票の開発者自身が、高ストレス者を選定する科学的根拠や、現場での実績がない点について、疑問を呈していることには留意しておく必要がある。

 そのために、従業員のストレスに関してより正しい状態を知りたい事業者の中には、厚労省の57項目に独自の設問を加え、百数十の項目でよりきめ細やかなストレスチェックの導入を行なっているところも少なくない。

 たとえば、57項目の「職業性ストレス簡易調査票」では、プライベートな行動や家庭生活の事に関する設問はごくわずかだが、外部機関のストレスチェックの中には、そのあたりの項目を重視したものも存在する。ウェルリンクの宮下氏は、「実は、職場や仕事によるストレスは、全体から見て1〜2割くらいなものです。体の状態、日常生活、ストレスへの対処、考え方や行動についても質問し、社会、心身、生活という3つの視点から総合的にチェックすることが大切です」と話す。

 受検者の利便性や受検率の向上を目指すなら、専用のマークシート式の用紙だけでなく、PCや携帯電話・スマートフォンのサイトで受検できる外部機関のサービスを利用することも検討したい。これなら出先や移動中のスキマ時間を利用して実施できるので、従業員の時間的拘束も最小限で済む。

ウェルリンクの「総合ストレスチェック Self」は、専用の用紙(左)、PCサイト、スマートフォンサイト(中、右)の中から選んで受検可能

 今回の法律では、年1回のストレスチェックを50人以上の事業所に義務づけている一方、50人に満たない事業所についての実施は「努力義務」とされている。この「事業所」としている点にも注意が必要だ。たとえば、従業員の総数が500人を超える企業であっても、その中のある拠点=事業所の人数が50人に満たない場合は「努力義務」になる。これは、50人未満の事業所では、産業医の選任義務が課されていないなど、実施体制が十分整っているとは言えない状況を考慮したためだ。

事業者側は、ストレスチェック結果を知ることはできない

 ストレスチェックの結果は、実施者(産業医や外部機関など)から従業員本人に対し、封書や電子メールといった手段で直接通知することになる。この段階では、実施者が受検者の回答を個別にチェックして判断するのではなく、受検者の四択回答の結果から、あらかじめ準備された回答パターンに沿ってシステム的に判定が導き出される仕組みだ。

「総合ストレスチェック Self」では、A4大の数ページのシートで結果が通知される。先頭のページには「あなたの全体傾向」として、グラフやコメントと共に、「A 良好」「B 課題あり」「C 要面接」の3段階で「ストレス判定」が示されている

 フィジカルな健康診断の場合と異なり、事業者の側は従業員個別の結果を知ることはできない。これは、高ストレスと判定された従業員が不利益な取扱を受けることがないようにというプライバシー保護への配慮だ。ストレスチェックの実施者が、高ストレス者など特定の個人の結果を事業者側に知らせる必要があると判断した場合でも、必ず本人の同意を得なければならない。逆に、事業者の側も、従業員個別の結果を知ることは、必要以上の個人情報を抱え込むことになりリスク要因となる。

 「要面接」の結果を受け取った従業員の中には、医師との面接を希望する人もいるだろう。その場合は、実施者あるいは、事業者に医師への相談を申し出ることができる。それを受けた事業者は、産業医などに面接の依頼を出さなければならない。ただしガイドラインでは、面接を申し出た従業員に対し事業者として、解雇、退職勧奨、配置転換など、不利益な取扱を行うことを禁じている。

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