GEが「GEキャピタル」を売却、その狙いは撤退(2/4 ページ)

» 2015年06月10日 10時30分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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GEの業績に特別な問題はない

 ではGEの業績には何か問題でもあるのでしょうか。その点で云えば、特段切羽詰まった問題があるわけではありません。昨年期は増収増益で、今期も同様の見通しだそうです。でもあえていえば、グラフを見てお分かりいただけるように若干の伸び悩みを示しているといえば、そう言えます(関連リンク)。

 ただしこの図体になると、多少の新製品ヒットなどでは増収にはほとんど効かず、特定事業部門で多少の増収があっても全体としてみるとほとんど影響はありません。しかも2011年から2013年に掛けてメディア大手のNBCユニバーサルを、2014年には家電部門をエレクトロラックスへ売却していることを併せて考慮すると、それでも売上微増を続けていることは大したものだと言わざるを得ません。

 では何がGEをして、これほどの主力事業の切り離しを決断させたのでしょう。当然、金融事業に第一の理由があります。ある種のとてつもないリスクを抱えているからです。それは2008年のリーマンショック時に顕在化しました。GEキャピタルが瀕死の状態に陥り、ひいてはGE全体も深刻な状態になったことを覚えている読者もおられるでしょう。

 当時、GEは150億ドル規模の増資を実施してこの危機を乗り切りましたが、このうち30億ドルの優先株はウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが引き受けました(のちにGEが買い戻し)。そして多くの米大手銀行と同様、GEキャピタルもまた、債務に対する600億ドルにも上る政府保証を受けてようやく存続できたのです。

 その後も金融部門の利益は伸びず、負債額は簡単には縮小せず、今現在でも同社の負債は約3300億ドルに上るとされています。米金利がじりじり上昇気配を示す一方で新興国経済に変調の兆しが見られる中、いつまた大きな経済ショックが起こり、悪夢が蘇らないという保証はありません。

 ではなぜ今なのでしょう。実はリーマンショック直後はもちろん、過去数年の間に何度も、資本市場関係者からは「GEはGEキャピタルを売るべきだ、でも無理だろう」という提言的な批判記事が出ていました。しかしながらそうしたコメントを裏付けるようにGEは金融部門を保持し続けてきました。ずっと売り上げで40%前後、利益で半分前後を稼いできた部門を手放すことがどれほど難しいか、想像に難くありません。

 しかし昨年のアニュアルリポートでは遂に「金融部門は当社の中核ビジネスではない」というコメントが掲載されるに至ったのです(つまり今回の発表は全く唐突ではありません)。これで売却の方向性は決まったことは外部にも分かりました。問題はその踏ん切りをつけるタイミングであり、きっかけでした。

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