ポカリ6億本の流通を止めない秘策、大塚倉庫の「ID戦略」とは?売り上げ倍増へ(1/4 ページ)

» 2015年06月11日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

 今年も暑い夏がやってくる。運動をせずとも汗をかいてしまうこの季節、熱中症などを防ぐためにスポーツドリンクで水分補給する人は多いだろう。

ポカリスエットは7月の「海の日」あたりに出荷量がピークに達する ポカリスエットは7月の「海の日」あたりに出荷量がピークに達する

 日本におけるスポーツドリンクの先駆けとして1980年に登場したのが、大塚製薬の「ポカリスエット」だ。現在は国内で年間約6億本もの販売数をほこるヒット商品である。

 実はこのポカリスエット、夏場のピーク時には出荷量が一気に通常の5倍に膨れ上がるほど、ニーズが急激に高まる商品なのである。これを滞りなく消費者の元に供給している“縁の下の力持ち”がいる。

 ポカリスエットをはじめ、炭酸栄養ドリンク「オロナミンC」や栄養食「カロリーメイト」、あるいは輸液、殺虫剤など、大塚ホールディングスのグループ各社が販売する商品の倉庫保管から出荷業務までを一手に引き受けるのが、物流専門子会社の大塚倉庫である。現在、同社の売上高は約500億円。これを近い将来に1000億円まで引き上げるのを経営目標に掲げている。

 その鍵となるのが外販の強化である。同社では以前からグループ会社に加えて、他社メーカーの商品の物流も請け負っていた。ただ外販比率は30%程度あったものの、売上高や利益率は微々たるものだった。「受注できるならどこでもいいという営業スタイルで、大塚グループとまるで関係ない業種の商品も取り扱っていた。ポカリスエットなどと一緒に配送することはできず非効率だった」と、大塚倉庫 執行役員の西牟田克之ロジスティクス本部長は振り返る。

 そうした状況の中、2011年に社長に就任した大塚太郎現会長の号令の下、濱長一彦現社長(当時は取締役営業本部長)を中心に大きな営業改革に取り組んだ。取引先を見直し、例えば、納品先が同じ場所だったり、夏型の商品に冬型を組み合わせたりと、商品ごとに最適な顧客企業を絞り込んだ。また、扱う商品は医薬品、食品・飲料、日用雑貨の3つに限定した。このように、各社独自で物流の仕組みやリソースを持つのではなく、大塚倉庫のプラットフォームを共同で活用するという「共通プラットフォーム」の構築によって、現在は外販比率が50%を超え、売上高も2011年以前はほぼ横ばいで推移していたのが、毎年20億円、30億円と積み上がった。

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