大井川鐵道で「ジェームス」の活躍が少ない理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2015年07月17日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

原作の世界観を大切にする

 ところで、この日、報道関係者に向けた取材資料にこんな文が掲載されていた。

 「大井川鐵道のトーマスやパーシーなどを紹介する場合、“機関車を改造した”、“顔をつけた”という表現はご遠慮ください」

 表現としては「お願い」になっている。しかし、これは本来、報道関係者が自主的に、厳密に守るべきことだ。なぜなら、きかんしゃトーマスの世界の中で、トーマスはトーマスそのものだから。けして別の機関車から作られたものではない。ジェームスもヒロもパーシーも同じ。それが当たり前であって、きかんしゃトーマスのファンは、その世界観を楽しんでいる。

 この一文を読んで、私は以前掲載した記事の後段を恥じた。私は鈍感だった。大井川鐵道にトーマスかやってきた。日本中から大井川鐵道が注目される。とても喜ばしいことだ。そして、大井川鐵道の技術力、従業員の鉄道を愛する気持ちも知ってもらいたい。だからあの記事を書いた。もちろん悪意はないし、その記事を当事者から咎められてもいない。

 しかし、今年の「お願い」で気付いた。あの記事は野暮なことをした。鉄道ファンや大井川鐵道のファンには興味深い内容だったかもしれないけれど、純粋なきかんしゃトーマスのファンのみなさんには、知らなくていい情報を与えてしまった。本当にごめんなさい。

 今、大井川鐵道にはソドー島からトーマス、ジェームス、ヒロ、パーシー、ラスティが訪れている。そして、ふだん大井川鐵道で活躍している旧国鉄型のC11形227号機と、C56形44号機、普段、千頭駅に展示されている9600形とC12形208号機は「なぜか姿が見えない」という状態である。それが、きかんしゃトーマスと大井川鐵道の真実だ。私たちは真実を報じなければならない。世界中のきかんしゃトーマスファンのために。

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