投資するなら風力発電!? ドイツ風力発電事情:松田雅央の時事日想(2/2 ページ)
ドイツのどこに行っても見かけるのが発電用の大型風車。この10年で数多くの風車が建設され、消費電力に占める風力の割合は6.4%にも達した。これほど風車が建設されたのは「投資先として魅力的だから」。なぜ風車に投資するのか? そして風車建設の問題点とは?
風車に吹く逆風
日本では落雷による羽の破損が問題とされ台風による倒壊もあるが、ドイツでその問題がクローズアップされることはほとんどない。台風のないドイツにも竜巻を伴う強烈な嵐は来るが、どうやら気象条件は日本の方が厳しいようだ。
ドイツの場合、これらの点は大丈夫なのだが最近は別種の問題が顕在化し建設に対する抵抗が非常に強くなっている。問題とされるのは主に以下の3点だ。
風車建設で問題とされる点
1.建設適地の減少
a.強い風が吹くことはもちろん、「(安全上の理由から)近くに建物がない」、「電波障害の原因とならない」、「航空機の障害にならない」等の条件をクリアできる土地が減っている。
b.今後の大規模な建設は海上に限られるが、建設コストの上昇、海洋生物に与える影響などを考慮する必要がある。
2.野鳥への影響
野鳥の生息環境を侵害すると指摘される。風車の羽や塔にぶつかるわけではないが、風車の建設適地は風の通り道、つまり鳥の通り道でもある。野鳥保護の立場からは「大型風車は立っているだけで野鳥に大きなストレスを与える」。
3.景観破壊
a.伝統的な田園地帯や美しい丘陵地帯に無粋な風車が立つことに反対。
b.これに対し建設推進派は「これまで工場の煙突や送電用の鉄塔は立てられてきたのに、風車だけダメと言われるのは納得がいかない」。
原油・天然ガスの価格高騰は再生可能エネルギーにとって強い追い風。それでも、経済的・社会的に優れ、環境面でも問題がなく、資源量が潤沢、といった夢のような再生可能エネルギーは今のところ存在しない。例えば太陽光発電も普及は進んでいるが、建設コストが高いため、設置面積の大きいドイツであっても発電量は風力の10分の1に限られている。結局のところ「これ1つですべて解決する」という再生可能エネルギーはないから、合理的な組み合わせを探すことが重要になる。
風力も元をたどれば太陽エネルギー。自然の恵みは上手く利用したいものだ。
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