Suicaのイノベーションはどこまで続くのか――JR東日本 椎橋章夫氏に聞く:神尾寿の時事日想・特別編(4/4 ページ)
2001年の商用サービス開始以来、日本のICカード市場を牽引してきた「Suica」。乗車券だけでなく、電子マネー展開、携帯対応なども積極的に進めているが、JR東日本が目指すものは何だろうか? 2008年の総括と2009年の展望を聞いていく。
Suicaが取り組む「第3の柱」とは?
首都圏から始まり、今や日本を代表する交通ICカード/電子マネーインフラの1つにまで成長したSuica。椎橋氏は2009年の目標として、モバイルSuica利用層の底上げと利用率拡大を挙げる。
「我々(JR東日本)としては、お客様にモバイルSuicaをもっと使ってほしい。現在のSuicaやVIEWなどカード型ももちろん便利なのですが、(画面表示と通信連携を持つ)モバイルSuicaの利便性はさらに上です。
昨年の段階で、カード型のSuicaでできることは、ほぼモバイルSuicaでも対応しました。さらにモバイルSuica特急券やスーパーモバトクなど、モバイルSuicaならではの便利さや料金メリットがあります。初期登録をハードルと感じる方もいらっしゃるようですが、ぜひ一度、モバイルSuicaを試していただきたい」(椎橋氏)
→クレジットカードなしでもモバイルSuicaが利用可能に(参照記事)
→4月からも年会費無料でモバイルSuicaを使う方法(参照記事)
唯一、モバイルSuicaへの不満点として残されているのが「オートチャージに未対応」である点だが、この改善にも前向きに取り組む模様だ。
「モバイルSuicaでのオートチャージを求める声が多いのは、我々もしっかりと受け止めています。『いつから』と具体的にお話しできる段階ではありませんが、JR東日本はお客様のニーズにはきちんと応えていく。その姿勢でサービス開発に臨んでいます」(椎橋氏)
カード型Suicaの爆発的な伸びの影に隠れがちだが、モバイルSuicaのユーザーはこの2年弱で約104万人も増えており、順調に数を積み上げている。機能と料金のメリットがさらに増せば、モバイルSuicaの伸びしろはまだまだありそうだ。
「モバイルSuica以外では、今後はSuicaをベースにした情報ビジネスにもチャレンジします。Suicaにはお客様の『移動』と『決済』の情報が集約されており、Suica情報はマーケティングやソリューションビジネスを展開する上で大きな価値を持ちます。今後はSuica情報の『見える化』と『情報資産化』を推進し、それをベースにした様々なビジネス展開を模索していきたい」(椎橋氏)
Suicaはこれまで“交通”と“電子マネー”で進化と発展をしてきたが、今後は“情報ビジネス”を「Suicaの第3の柱として育てたい」(椎橋氏)と話す。
先進国を中心に広がる「都市化の進展」と「環境意識の高まり」は、街における人の移動と経済の在り方を確実に変え始めている。21世紀の交通システムや経済圏において、高度に情報化・サービス化された新たな公共交通の存在は、今後さらに重要になるだろう。この分野において、JR東日本のSuicaは間違いなく世界の先頭を走っている。
Suicaが今後どのように進化し、サービスとビジネスを拡大するのか。そのエコシステムがどこまで拡大するのか。期待を持って見守りたい。
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