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コラム

本当に転職に有利なのか? 日本の社会人大学院事情山崎元の時事日想(2/2 ページ)

不景気になると、キャリアアップや転職を目指すため「社会人大学院」を希望する人が増えるという。多くの大学では社会人でも単位が取得できるようなカリキュラムとなっているが、本当に社会人大学院を卒業すれば転職に有利なのだろうか?

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なかなか評価が高まらない日本の社会人大学院

 筆者の授業を取ってくれた受講者は、いずれも真面目で、会社の仕事と授業の課題(宿題も多い)を両方こなす生活は大変そうだったが、辛口のコメントを許してもらうと、キャリアプランも研究も中途半端だったという印象を持つ。大学院卒の資格及び授業の内容を仕事や転職に生かすという明確な戦略がある方は少ないし、道を変えて研究の世界に入るには明らかに基礎学力不足の方が多かった。

 日本の企業は、これまで一貫して新卒では「素材を採る」という方針だった。いわゆる「地頭」(「ぢあたま」。自分で考える力の強い頭のこと。慶應義塾大学SFC教授の高橋俊介氏が最初に使った言葉だと記憶している)のいい人材を採ることが彼らの採用の目標だった(実際には「地頭」よりも「性格のいい使いやすい部下」を採っている感じだが)。また、中途採用にあっては、学歴よりも、実務経験の質を重視する「即戦力指向」だ。これらの方針は、方針自体としては間違っていないと思う。

 日本の社会人大学院が、企業側に、教育内容自体を評価されて、卒業生の価値を高めることができるまでの道のりはまだ長そうだ。海外MBAホルダーの中には、起業して成功する例や大企業の経営者に抜擢される例が増えて来て、MBAというものに対する認知も広がってきたし、彼らに対する評価が徐々に高まってきているように思う。日本の社会人大学院も、その出身者で印象的な成功者が何人か出ると、評価が高まるに違いない。それまでしばらくの間は、学校側でも受講生側でも、進むべき道の模索が続きそうだ。

 例えば若いビジネスパーソンに「キャリア形成として社会人大学院はどうですか?」と問われたとすると、今の時点では「勉強自体が好きだという人は別として、キャリアにプラスかといわれると、今の時点ではお勧めしない」とお答えする。

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