ロックギタリストはなぜ、音楽サイトの編集長になったのか(前編)――BARKS編集長・烏丸哲也さん:嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(4/4 ページ)
洋楽・邦楽を問わず、幅広い音楽情報を発信するWebサイト「BARKS」。BARKSの烏丸編集長は、元々ロックバンドのギタリストから音楽雑誌の編集者に転身したという経歴の持ち主だ。「音楽に対する愛情がない人々が音楽情報を発信していてはいけない」と憂える、烏丸さんの音楽に対する想いとは。
名物編集長の仕事術
強い使命感を持ち、明確なビジョンの元にユーザーニーズに対応した音楽情報を提供し、アーティストからも、音楽好きたちからも支持されている烏丸さん。彼は、BARKS編集部で、どのようにリーダーシップを発揮しているのだろうか。
「編集部員全員が、音楽に対する純粋な気持ちを失わないようにすることが大切だと考えています。仕事ですから、時には自分の好みではない音楽を聴かなくてはいけないこともあります。そんな時でも、その音楽の素晴らしさを発見し、愛情を感じるような、『音楽への好奇心、愛』を、編集部内で共有化するようにしているんですよ」
そんな烏丸さんは、ある時、スタッフから思いがけないことを言われ、それ以来勤務スタイルを変えたという。
「そうなんですよ。『編集長は毎日一番早く出社し、最後に帰るので、迷惑だ』って、30代の既婚男性スタッフから言われて。それ以来、私は、家で仕事をする時間を増やしたんです」と苦笑する。
一日の流れを追ってみた。
午前7時半起床。朝食を摂りながら、インターネットサイト各社に情報を提供。これが9時ごろまでかかる。それからロンドン特派員からの情報をWebにアップし、午前10時過ぎに家を出る。
電車の中では、ひたすら音楽を聴き続ける。11時ごろに会社に着くと、20時〜21時ごろまで、編集長としての仕事に没頭する。ただし、ライブのある日は、18時ごろに退社する。
22時ごろに帰宅。夕食を摂りながら、PCに向かって、仕事の続きをする。そして午前2時ごろに、一区切りつけ、就寝。土曜や日曜は、平日にやり残した仕事を片付ける絶好の機会なので、ひたすら自宅で仕事しているという。
自宅で仕事といっても、烏丸さんは一人暮らしではない。ウィークデイであれ、週末であれ、ご家族と同じ空間で仕事に集中するというのは、実際にはなかなか難しいのではないだろうか?
「ええ、そうなんですよ。ですから大事な仕事をしていて、今は集中しないといけないという時には、『オレ、頑張ってますオーラ』を出すようにしています」と笑う。
えっ、“オレ、頑張ってますオーラ”とは、具体的にはどういうもの?
「『ヤベー!』って、大きな叫び声をあげるんですよ。そうすると、家族も状況を察して、ムダに話しかけなくなるんです(笑)。そして、そろそろ話しかけられても平気かな……と思ったら、今度は『あ〜、終わった〜!』って、叫ぶんです」
365日、ほとんどすべての時間をBARKSの仕事に投入しているように見える烏丸さんだが、そんな毎日が楽しいのだという。
「最近では、自分の楽しみのために音楽を聴くこともなくなりましたが、とにかく今は、仕事自体が楽しいんですよ。もし、時間ができれば、ゆっくり楽器を触ってみたいとは思いますけどね」
BARKS編集長として、日本の音楽シーン再生を目指して、良質な音楽情報提供に邁進する烏丸さん。来週掲載する後編では、ミュージシャンとして活躍した時期を含め、彼のこれまでの人生行路をご紹介しつつ、これから、どういう方向に向かおうとしているのか、明らかにしていきたいと思う。(後編に続く)
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
関連記事
- 南極越冬隊は何を食べているのか――南極越冬隊調理担当・篠原洋一さん(前編)
2008年12月25日、第50次日本南極地域観測隊が出発した。1年3カ月間という滞在期間中、南極越冬隊の胃袋を支えるのが、調理担当の篠原洋一さんだ。ここでは2回にわたり、彼らがどんな活動をし、どんなものを食べているのかを篠原さんに聞いていく。……ひょっとして、ペンギンを食べたりするのだろうか? - 千葉県から世界へ! 串焼きチェーン「くふ楽」が目指すもの――福原裕一氏(前編)
年間離職率が30%を超える外食業界で離職率は毎年5%以下という居酒屋がある。千葉を中心に「くふ楽」「豚の大地」などを展開するKUURAKUグループだ。就職希望者全員に内定を出すなど話題になった同社で、若者が「働きたい」「辞めない」のはなぜなのか? - 赤坂サカスは花を咲かすか? ――街おこしのキーマンは「神社経営の変革者」(前編)
東京・赤坂の街に注目が集まっている。3月20日に複合商業施設「赤坂サカス」がオープン、28日にはこれを祝し、100年ぶりに復活した赤坂氷川神社の山車が巡行した。氏神様を核として、赤坂の街おこしに尽力する――若き神主、恵川義浩氏の構想とは? - 嶋田淑之氏連載一覧
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.