ユニクロの未来を左右する“満足の沸点”:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
世の中には日常のささいなことで満足する人がいる一方、すばらしい結果が出ているのにまったく満足しない人もいると主張するちきりんさん。そうした“満足の沸点”の違いによって、ビジネスではどんな影響が現われてくるのでしょうか。
ユニクロに必要なのは“満足の沸点が異常に高い人”
これまでファーストリテイリングは事業の責任者、経営を担える人材を育てるためのさまざまな人事の仕組みを導入してきました。しかし、2005年の社長交代劇の後、柳井社長は「経営者は育てられないと学んだ。だから探してくることにする」とおっしゃっていました。そして、実際に外部から積極的に幹部候補生を雇い入れているようです。
「何は学べて、何は変えられないのか」という点は興味深い点ですが、ちきりんは「満足の沸点には個人固有のレベルがある」と思っています。人事制度などのインセンティブの付け方によって「より熱心に働く」ということはあっても、また、各種研修制度によって「手法を学ぶ」ということはあっても、何かの制度によって個人の満足沸点が高くなる、ということはおそらく起こらないと思うのです。
なので、柳井社長のような満足の沸点が桁外れに高い経営者が次の世代に期待しているのは、まず何よりも“少々の成功では決して満足しない人”ということになりそうです。
そうなると必要なのは、満足の沸点が非常に高い人を外部から探し出してきて採用し、事業のやり方や経営手法を後から教えこむ、という方法です。アパレル業界や経営についてよく知っていることや、海外市場について詳しいとか語学が得意ということも大事ではあるでしょうが、まず何よりも満足の沸点が高くないことには、ああいう経営者の方とともに走ること自体難しくなってしまいます。
1兆円の売り上げが見えてきた今でも、世界の富豪として名を連ねるレベルの財産を築いた今でも、まったく満足するそぶりさえ見せない柳井社長。今の日本における数少ない勝ち組企業であるファーストリテイリングの将来は、そんな社長とともに走ることのできる“満足の沸点が異常に高い人”をどのくらい見つけられるか、そのことにかかっているのではないでしょうか。
もちろん、世界で勝負できるアパレル企業が日本から誕生することを、満足の沸点が非常に低いちきりんも心から期待、そして応援しています。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
関連記事
- お金が増えないのは“本気”じゃないから?
「貯金を増やす方法とダイエットする方法には共通点がある」というちきりんさん。そして、その方法の中でも、本当に効果がある方法を多くの人は選ばないと主張します。それはなぜなのでしょうか。 - “分を知る”ことは大切です
お金がないのにブランドものを身に付けたり、一日中働いているのにハイヒールを履いたり……。自分の属している社会階級の“分”から外れたことをすると結局は不幸な結果になる、とちきりんさんは訴えます。 - 家電のネーミング進化論
家電のネーミングは種類によって、親しみやすい日本語だったり、かっこいい横文字だったりと傾向が変化します。それぞれのネーミングにどんな意図があるのか、考えてみました。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.