誰が夕張市の借金を返しているのか:新連載・坂村宗彦の地方財政から格差を見る(3/3 ページ)
本来認められない借金を大量に行い、財政運営が立ち行かなくなったことから、2007年に国から「財政再建団体」に指定された夕張市。国や北海道の管理のもと、ここ2年間は10億円以上、借金を返済しているのだが、その原資はどこから来たものなのだろうか。
「都会は払い損、地方はもらい得」なのか
2007年度の国税収入は約55兆1000億円でした(収納済額)。その一定割合が地方交付税特別会計に回っていて、2007年度の場合14兆6000億円です。さらにここに繰越金などを加えて、15兆2000億円を地方交付税として全国の自治体に配っています。
次回、詳しくお話ししますが、この地方交付税にまわる国税を首都圏がかなりの部分、負担している一方、首都圏の自治体の多くはこの地方交付税をもらっていません。その代表が東京都です。したがって、東京都から見るとまさに「都会は払い損、地方はもらい得」ということになると思います。
しかし、地方から見ると、これは死活問題です。自治体の支出はかなりの部分が固定的に決まっていて、その支出をまかなう収入は地元だけでは足りません。さらに言うと、地方交付税をもらわずに地方財政を運営できるのは、全国に約1800ある自治体のうちわずか188しかありません(2007年度)。全体に占める比率は低いですが、この188自治体に住んでいる人は3460万人で、全人口の27%に当たります。
自治体の支出は教育や消防救急など固定的な経費が多く、歳入が少ないからといってその歳入の中で支出をまかなうことは不可能です。その財源はより税収の多い地域に依存せざるを得ません。つまりこれは(例外を除いて単純化しますが)、人口が少なく税収が少ない多数の自治体と、人口も税収も多い少数の自治体の間の差であり、まさに大都市と地方のギャップの話なのです。
この、東京を始めとする大都市と地方のギャップをどう考えればよいのか。次回は夕張の対極に立つ東京都のお話をします。
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