チロルチョコVS. ブラックサンダー、“ポケ菓子”市場の勝者は?:コンビニ、ヒット商品の理由(2/2 ページ)
1個当たりの価格が20〜50円と低単価のお菓子である“ポケ菓子”。この市場で激戦を繰り広げているのが、チロルチョコとブラックサンダーである。両商品の戦略にはどのような違いがあるのだろうか。
2種類しかないブラックサンダー系商品
驚異的な伸びを示しているブラックサンダー系の商品を単品で見ると、ラインアップは「ブラックサンダー」(30円)と「ビッグサンダー」(50円)の2種類のみで、ここ4年間、売れ筋は変化していない※。
これはライバルであるチロルチョコとは大きく異なる戦略だ。チロルチョコの戦略は「アイテム改廃のスピードアップ」「新商品への積極的なチャレンジ」により売り上げを伸ばすことを基本戦略としている(「なぜチロルチョコは成功したのだろうか?」)。
また、チロルチョコは近年、“高価格”商品もチャレンジしている。これまでは20円で販売していたのだが、2009年11月に発売した「チロルチョコ(幻の白いちご味)」では30円の価格帯に挑戦。この試みは成功を収め、チロルチョコ(幻の白いちご味)は現在、販売数量でトップとなっている。
コンビニの既存店売上高は、タスポ効果などを除けば10年以上も前年比でマイナスの状況が続いている。そんな中、コンビニ各社では1店舗平均の売り上げを増やすため、客単価向上(来店者の購入点数の増加)を目指した商品開発、品ぞろえの改善を行っている。低価格のポケ菓子を導入すると、来店者がつい“もう1つ”購入し、客単価向上を図れることが分かったため、近年、ポケ菓子の導入促進や売り場拡大が進められるようになった。だが、ポケ菓子市場が成熟してくると、この効果も薄れることとなるだろう。
生き残りをかけて、チロルチョコのように価格帯アップや積極的な新商品開発にチャレンジするメーカーもあれば、有楽製菓(ブラックサンダー)のように(結果的に)売れ筋商品を絞り込むメーカーもある。どちらの戦略が正解かというと、現状ではポケ菓子全体の売り上げが伸びているため、両社とも正解だと言えるだろう。ただ、今後は両社の戦略が変化することも考えられるので、読者のみなさんもコンビニでポケ菓子売り場の戦いを見守っていただければと思う。
著者プロフィール:笠井清志
船井総合研究所シニアコンサルタント。複数企業でキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)で連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。
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