スマホの普及&テレビ離れで、戦後最大のメディアイス取りゲームが始まっている:遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(4/4 ページ)
1日の平均テレビ視聴時間、17.9分減少。PCでのネット利用時間、22.1分減少……いずれもこの「1年」で起きた、日本人のメディア利用状況の変化だ。消費者の時間やお金を奪い合う壮大なイス取りゲームは、いったいどこへ向かうのか?
スマートテレビはどうなるのか
スマートテレビに関する議論は、従来からあるテレビのパラダイムがどこまで壊され、新しい価値を生むかというせめぎあいの中にある。Appleが2013年に発売するというテレビは、「Siri」による音声認識エージェントで操作するようになるという説がある。これは、単純にリモコンやスマートフォンなどの余計な装置を持たなくていいという話ではない。彼らは、Webとは異なる新しいデジタル資源を作ることを目指しているはずなのだ。その中に、広い意味でのテレビも含まれているという発想だろう。
米国はもともとケーブルTVや衛星放送が盛んで、多チャンネル化が日本よりずっと進んでいた。家庭用ゲーム機、Blu-ray Discプレーヤー、AppleTVやそのほかのセットトップボックスがテレビにぶら下がっていて、それぞれでHuluやNetflixなどのネット経由の映像が見られている。日本のテレビ番組表の感覚ではないので、いま画面に映っている映像が、どの番組の第何話なのかを認識する技術が注目されていたりするのだ。
一方、ソニーやサムスンは、自社のどの端末でも同じコンテンツが見れるようにすると言っている。音楽では、FacebookやGoogleが“友達なら曲を借りて聞ける”と主張しているし、Netflixの「Roku」というセットトップボックスは、プレイリストや再生位置をクラウド側で覚えている。進化すべきなのはテレビではなくて、クラウドなのだという意見もあるかもしれない。
テレビの未来とは、これから続くであろうメディアによるイス取りゲームの果てにある「映像とネットの融合」の時代のことなのだ。それを象徴するようなパラダイムが、すなわち未来のテレビなのではないか? それは、20世紀のテレビのような強烈なメディアパワーを持つべきで、それによって人々が活性化されるべきものだと思っている。
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