ネット時代のマーケティング担当者に捧ぐ、ソーシャル海の泳ぎ方:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
マーケティングも落ちたもんだ。素人を動員したあげく、だませずにバレるとはね。昔はやらせもプロの仕業だったのだ。
Facebookにはまだマーケティングがない
日本だけで1000万人が泳ぐFacebook、その2011年の収入源は広告が9割、仮想通貨「Facebook Credits」が1割である。仮想通貨とは参加者同士のやり取りで使われるお金、そのやり取りの手数料収入である。これが増えるという期待、参加者が喜び主宰者のFacebookも儲かるところに「50億ドル(約4000億円)」という莫大な株式公開価値がつけられている。
だがそこにマーケティングはない。この1割をどう増やす戦略がまだ見えてこない。
ソーシャルの参加者を見てほしい。ある人は仮面を付けてソーシャルの海を泳ぎ、ある人は素顔で浮かぶ。ネットのリテラシー(活用力)も参加度合いも違う、情報公開のオープン意識も違う、もちろん参加目的も違う……違うことづくめなのに同じ海を泳いでいる。
「キミはここを泳いで」「もっと沖に出て」「あなたは遊泳禁止」というようなガイドがない。顧客層をセグメントする仕掛けが見えない。だから同じ人が、あるときはネット掲示板で炎上し、SNSでハラスメントに遭い、一方でコバンザメ(味方や同調者)を従えるという奇妙な現象が起きる。いわば真夏の人がいっぱいの“芋洗い”の海辺なのである。
だからこそチャンスもある。海水浴客を識別して「こっちにおいで」と浮き輪や救命具を渡す。今のそれはゲームや占いアプリだが、それで個人情報を抜くのはとっくにバレている。もっと心に響くマーケティングをしよう。
その好事例は5つ目。筆者はこれに一番期待している。
ユメにフォーカスしたい
“キックスターター”マーケティング
キックスターターとは提案者が製品を開発したい、店を出したい……など提案をまとめ、その実現のための必要資金を一般消費者に募って事業化をする仕組み。資金提供の見返りはアイデア実現時の製品やサービスの提供である。事業する人の夢と応援する人の期待で成立する。
「応援」「善意」「夢の共有」こそ、“やらせ”や“あおり”のマーケティングに疲れた消費者が欲していること。しかも応援する人々は同じ好みや価値観、同じ期待を持っている。応援者へのマーケティングは断然浸透しやすい。
さてマーケティング担当者のあなたは、ソーシャルの海でゴーグルを付けますか? それとも“マーケティング砂漠”で喉を乾かせますか?
関連キーワード
マーケティング | コンサルタント | マーケッター | Facebook | SNS | 広告 | コピー | コンサルティング | 宣伝 | ステルスマーケティング | キャッチコピー | クラウドファンディング | 郷好文の“うふふ”マーケティング
関連記事
- “広告新聞”じゃダメ、こんなニュースサイトが欲しい!
アクセスはしやすいものの、情報の深堀りといった意味では不満が残ることも多いニュースサイト。どんなニュースサイトが読者に優しく、収益もあげられるのか、考えてみた。 - “のぼらない”のも粋? 東京スカイツリーの楽しみ方
5月22日に開業する東京スカイツリー。しかし、最寄り駅の改札と、スカイツリーや商業施設の東京ソラマチは直結しているため、地元がうるおわない可能性があるという。そこで、地元を回りながら東京スカイツリーも楽しめるような観光ルートを探してみた。 - 欧州デザイン界お墨付き、くしゃっと丸めて使える地図はどう生まれたか
普通の紙の地図とは違い、くしゃくしゃに丸めてもまた広げて再利用できる「Crumpled City MAP(クランプルシティマップ)」。欧州のデザイン賞を数々受賞したこの商品の開発元Palomar(パロマー)社に話を聞きに行った。 - “卓上ルンバ”に吸い寄せられて――『大人の科学』の魅力を探ってみた
レコード盤蓄音機からプラネタリウム、二眼レフカメラ、卓上ルンバに至るまで、さまざまな付録が魅力の『大人の科学マガジン』。どんなコンセプトをもとに付録を制作しているのか。編集長の西村俊之さんに尋ねてみた。 - 仕事はチャットで変えられる? チャットワークでインタビューしてみた
仕事で活用しやすいようなシステム「チャットワーク」を作ったEC studio。どんな狙いからサービスを作ったのか、“チャットインタビュー”で聞いてみた。 - 郷好文の“うふふ”マーケティングバックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.