「結構です」は肯定? 否定?:日本人が気づいていないヘンな日本語(3/3 ページ)
「日本語の『結構です』はとってもまぎらわしい言葉だ」と、英語教師のセイン氏は言う。連載第1回は、4つの意味を持つ日本語の「結構です」について勉強していこう。
もともと「結構です」に否定の意味はなかった
セイン:つまり、3番目の場合だけが否定の意味になるんですね。これから気をつけます。ちなみに、同じ言葉なのにどうして反対になるんですか?
長尾:本来、「結構です」には否定の意味はないんです。3番目の場合も、「私は充分満足しているから、これ以上はいりません」と遠慮の気持ちを表したものなんです。それが、結果として否定になっているわけです。
だから、否定的な「結構です」は、必ず相手からの提案に対してのものなんですね。そこに注目すれば、誤解しないと思いますよ。巻頭のマンガのような場面では、相手が「ぜひお願いします!」という意味で「結構です」を使うことは、あまりないです。
セイン:「提案」に対して「遠慮」しているから否定になるんですね。ややこしいですね……。
長尾:日本人もそう感じていますよ。電話セールスの悪徳業者などは、客が「結構です」と断ったのに、羽毛布団や変な彫刻を送りつけて「結構ですねとOKしたじゃないか」と高いお金を請求するそうです。日本語のあいまいなところをついた詐欺商法です。
そもそも「結構」というのは、もともとは中国で建物の構造や文章の構成など、ものごとの組み立て方を意味する言葉だったんです。それが日本に来てから意味が広がってきて、計画や準備のことを指すようになりました。さらに広がって、その計画が「よろしい」と評価する使い方が生まれたのです。
セイン:なるほどね。とりあえず、悪徳業者と思われたら困るので、もう「結構です」は間違えません(笑)。
(つづく)
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