コラム
私たちの社会は自然災害に対して少しは安全になったのか?:藤田正美の時事日想(4/4 ページ)
春の大嵐に襲われた日本列島。河川の増水警告メールが届く中、横浜市のWebサイトでは適切な情報提供ができていなかった。筆者は基礎自治体の「適正」な規模に疑問を抱く。
あの3. 11について、仙台市の奥山恵美子市長は、「市のすみずみで何が起きているのか、まったく分からなかった」と語った。100万都市ですら、首長が状況を細かく把握できない。まして横浜のような巨大都市では、大地震が起きれば、都市機能はマヒしてしまうことは想像に難くない。あの東日本大震災の教訓の一つは、沿岸の小さな市の首長が避難やその後の救援活動で活躍したことではなかったのか。つまり、市民から選ばれて責任を背負った人が、市民のために活動するのだが、市民の数があまり多くないほうがすみずみまで目が行き届くということだ。
横浜市も18の行政区に分かれているが、その区長はお役人である。いざというときは、市民のほうを向かずに、上司である市長のほうを向く。選挙で選ばれているわけではないのだから、市民に直接責任を負っているわけではない。そうなったら、370万都市は身動きがつかないだろう。
これまでは県という組織から権限を奪うために、多くの都市が政令指定都市を目指してきた(神奈川県には横浜、川崎、相模原と3つも政令市がある)。しかし行政サービスという観点から見たとき、当然、大きさには限界がある。このことをもっと真剣に見直すべきだと思う。そして市民も、自分たちのガバナンスを誰に委ねているのか、考えてみるべきだ。つながらない横浜市の河川情報ページにいらいらしながら、そんなことを考えた。
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