限界に来た家電量販店のビジネスモデル(2/2 ページ)
大手家電メーカーの製品開発力と高率リベートに依存して伸びてきた家電量販店。そのビジネスモデルの限界が見えつつあり、その革新のための試行錯誤もまた注目される。
ヤマダ電機の住宅販売戦略は成功するか?
あれやこれや考えると、家電量販店のビジネスモデル自体が限界に近づきつつあるといってよかろう。それを象徴する動きが、旧三越新宿店跡の店舗をユニクロとコラボして「ビックロ」にした、ビックカメラの試みだったかもしれない。太陽光発電設備の販売やネットサービス契約窓口など新しい商材を扱うことにも各社は取り組んでいるが、従来の「商品仕入販売」または口利きビジネスの域を出ていない。今はいずれの社も試行錯誤の最中なのだろう。
2011から2012にかけて、もうひとつ重要な動きがあった。それがヤマダ電機による、中堅住宅メーカーのエス・バイ・エルと住設機器メーカーのハウステックHD(旧日立化成工業の住宅設備機器部門)という2つの住宅関連メーカーの買収である。つまり業界トップ企業が有力新規事業として住宅関連領域に注力することを目指したのである。実際、その後多くのヤマダ電機店舗にエス・バイ・エルの住宅販売コーナーが設けられており、「家電量販店でスマートハウスが買える」と話題にもなった(CMも流された)。
ただし家電量販店で家を買う消費者が急増するとも考えにくく、経営インパクトとしては大きくはないだろう。それより家電量販店のビジネスモデルを変革するほうが重要だ。そしてネット通販に効果的に対抗するには実店舗でしか体感できない仕掛けとサービスを組み上げるしかないが、その策はいくつかありそうだ。
多分近いうちに、(エス・バイ・エルの住宅だけでなく)ハウステック製を中心としたシステムキッチンやバスルームが、ヤマダ電機店舗内に設けられた住宅関連フロアで大々的に売られるのだろう。太陽光発電や省エネ設備といった光熱絡みだけでなく、水廻りと絡めて住宅リフォーム需要を取り込もうというのは、取り掛かりとしては十分現実的である。何といってもバスタブの広さ・深さやシステムキッチンの使い勝手は、現時点のネット通販では体感できないものである。
少なくとも、傷ついた家電メーカーの商品開発力と販売リベートだけに頼る「待ち」の姿勢より、こうした新しいビジネスモデルを試してみる「攻め」の姿勢のほうが頼もしいのは間違いない。(日沖博道)
関連記事
- 牛丼並盛280円、その価格戦争に戦略的見通しはあるか
牛丼並盛を値下げした吉野家は売上増には成功した。一方、さらなる対抗値下げでは効果に乏しいすき屋と松屋。この局面での価格政策には、より高度な戦略性が求められる。 - 「丸亀製麺」の合理性が“常識破り”と捉えられる不可解
急成長中のうどんチェーンを採り上げた番組は、その秘密を“常識破りの非効率経営にあり”とした。しかし同社は合理的であり、その合理性の範囲で十分効率的である。それを“常識破り”というなら、世間一般の“常識”のほうが間違っている。 - 「断れない営業」は組織を滅ぼす
売上が欲しいゆえに“望ましくない”案件を受注、または“望ましくない”顧客と取引することは、組織の多大な負担になり体力を奪う“罪”である。 - 中国からの「撤退ブーム」が教えるもの
「脱中国」の動きが盛んだ。きっかけは反日デモと暴動だが、本質的には中国が手軽に儲かる生産地ではなくなったからである。それは労働者の権利を無視することで成り立っていたビジネスの構造が変質したということでもある。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.