コラム
“アンチ・エイジング”は迷惑だ:INSIGHT NOW!(2/2 ページ)
もちろん、見た目の年令と肉体の年令を維持しようとするのは悪いことではない。しかし、今どきのアンチ・エイジングは、成熟・成長という面まで否定してしまっているようだ。
アンチ・エイジングは、中高年やシニアの居場所探しのようにも見える。自身の年相応の価値を見出せないので、今までと同じように若者と一緒に振る舞おうとする。年の功を発揮する自信がないので、若者と同じ役割を果たすしかなく、そのために若々しく見えようと頑張っている。エイジングを果たした者としての居場所が分からず、今までの場所に居座り続けようとしているように見えるのである。
そんな、若さを若者たちと競おうとするようなアンチ・エイジングは、若い世代にとって鬱陶(うっとう)しいものでしかない。肉や酒や楽器に古いものの価値があるように、人にも年を取ればとるほど価値が出てくる部分がある。本来はそこを自覚し、磨き続け、異なる役割を果たすことが、世代間が協調する道というものだろう。
今どきのアンチ・エイジングは、周囲からは「期待はずれ」であり、若い世代からは「鬱陶しい」ものとなっている。中高年やシニアが考えるべきなのは、アンチ・エイジングではなく、エイジングによる価値である。エイジング・ビーフになるか、安売りの輸入牛肉になるか。長期熟成されたウイスキーになるか、安売りウオッカになるか。十分にエイジングされた良品になるか、技術のない国の激安家電になるか。それを選ぶということだ。(川口雅裕)
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