労働法の“ひずみ”を解消する「7つの処方箋」とは:公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」(後編)(2/4 ページ)
前回のインタビューでは労働法のひずみが生じている背景などについて聞きました。今回は、新しい労働法の姿として、著者の倉重氏らが提唱している7つの処方箋について、詳しく伺います。
ホワイトカラーエグゼンプションを見直す
眞山:本書では、いわゆる「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入も提唱していますね。
倉重:ええ、ホワイトカラーエグゼンプションは、第1次安部政権時代に提案されたのですが、「残業代ゼロ法案」とマスコミに評されてうまくいきませんでした。想定している年収が400万円以上と、かなり広範囲に影響が及ぶことも反対論を多くしたのではないかと思います。
しかし、現実問題として、収入の多い人は就労時間の対価として金銭を受け取るわけではなく、成果に対して金銭を受け取っているような人が多いのです。単純作業であれば、作業時間と成果は比例しますが、いわゆるホワイトカラーの人は長時間働いたからと言って、無条件に賃金を多く支払うのはやはり馴染まない。現に、モルガンスタンレー事件という、高所得者に対しての時間外手当の支給は不要と判断されたケースもあります(※)。
もちろん長時間の労働に対する健康を害するリスクは別途ケアする必要がありますが、ある程度高給の人については時間に応じた賃金支払いでなくとも不都合はないのでは? と思っています。
眞山:第1次安部政権時の教訓を生かして、本書では1000万円という収入の閾値(しきいち)を設けていますよね。これだと逆に対象者が少なくて、ほとんどの人にとって無関係な制度になってしまう気がしますが、どうでしょう?
倉重:確かに対象は少ないですね。しかし意識改革の第一歩として、まずは対象が限られていてもいいので制度を導入すべきであると私は思います。「古い制度を見直す必要があるんだ」という意識付けができることに意義があるのではないでしょうか。
また、実務的には、マクドナルド事件以降「名ばかり管理職」問題がクローズアップされ、残業代を支払わなくても良い管理監督者の範囲が裁判上相当狭くなっていますし要件も不透明です。そこで、まずは明らかな年収要件を導入すべきと考えています。
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