プロスポーツ選手の活躍を陰で支える通訳という存在:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
セリエAのACミランに入団した本田圭佑選手についてチーム幹部は「ホンダは専属通訳を付けない」と語った。世界で活躍するプロスポーツ選手にとって専属通訳の存在意義とは?
上原浩治や川崎宗則は日本語を使ってでも自分の言葉を重視する
2012年オフに退団した松坂と入れ替わるようにレッドソックス入りしたのが上原浩治投手。2013年シーズンは守護神として7年ぶりにチームのワールドシリーズ制覇に貢献したのは記憶に新しいところだ(参照記事)。
「上原は関西出身でノリのいいキャラ。英語は完ぺきではないけれどブロークンイングリッシュとオーバージェスチャーで一生懸命に相手と話そうとする。だからナインから愛され、すぐにチームに溶け込むことができたのです。
大事なところでは通訳を呼び、それ以外はなるべく1対1で話をする。それが彼のポリシー。これまでも他のチームメートと通訳を伴わずに何度も食事に出かけています。上原本人は『日本語でも、気持ちを込めて話せば相手にちゃんと伝わりますよ』と大マジメに言っていますからね(笑)」(前出の関係者)
そう考えれば、ブルージェイズと今オフに再契約を結んだ川崎宗則内野手も上原と同じようなタイプと言える(参照記事)。
レンジャーズで大黒柱になりつつあるダルビッシュ有投手は、日本人メジャーリーガーの中では「異質」だ。日本ハム時代から英語を学んでおり、そのレベルはかなりのもの。専属通訳を帯同しながらもコミュニケーション上では、ほとんど必要としていない。それどころか2013年シーズン中はイアン・キンスラー内野手や、バッテリーを組んだ捕手のA.J.ピアジンスキーと英語で激しく口論する場面も見られた。
「『言いたいことは、なるべく自分の言葉で直接言う。でも仲間だからといって、ヘンに相手にこびるようなことはしたくない』というのが、ダルのスタンス。ヤンキースのイチローも、ダルに近い考え方のようです。
ちなみにイチローも専属通訳を伴っていますが、実際のところ彼の英語力は米国人記者いわく『完ぺき』。それでもイチローが長年に渡って通訳を付け続けているのは『自分の発言が変なかたちでとらえられることを防ぎ、メディアとの距離をコントロールするため』と言われています」(メジャー関係者)
通訳に対する海外プレーヤーたちの考え方は三者三様。だがプレーだけでなく、通訳に頼り過ぎずに自らのコミュニケーション能力を向上させることも大事なのは間違いないようである。
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