米国の「メイド」問題で明らかになる外交官の不都合な真実:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
今、米国とインドの間で外交関係が急速に悪化している。きっかけは米当局がメイドを不当に扱ったインド人女性外交官を逮捕したこと。
ロシアの外交官らも約1億5000万円の組織的横領を?
ただ、いろいろと調べてみると、自分たちの立場を利用して犯罪に手を染めていると思われる外交官はインドの副総領事のほかにもいる。米会計調査院の報告書によれば、はっきりと分かっているだけで2000年から2008年の間に42人のメイドらが雇い主である外交官から虐待を受けている。そのうちの11件が人身売買の疑惑、ビザを使った詐欺も報告されている。報告書は、「本当の件数は、これよりもはるかに多い可能性がある」とし、雇い主の報復を恐れて告発できないケースが多いと結論付けている(参照リンク)。
また今回の騒動が始まったのと同じ2013年12月に、別の国の外交官らに対して大きな疑惑が浮上している。ロシアだ。米当局によれば、ロシア大使館の現役外交官と元外交官、そして彼らの家族を含む49人が、2004年から2013年の間に、150万ドル(約1億5000万円)を組織的に横領していたとして起訴された。
手口はこうだ。彼らは貧困層向けの医療費補助制度を悪用し、偽の書類を作って不正にカネを受け取っていた。ロシア大使館側は、「疑惑は事実かどうか疑わしい」と米当局の捜査に疑念があると指摘している。この疑惑についても今後の進展が気になるところだ。
インドでは2014年に総選挙が行われる予定。現時点の専門家らによる見立てでは、与党国民会議は破れ、最大野党のBJP(インド人民党)が政権を取る可能性がある。ヒンズー民族主義的なBJPが政権を取れば、今回のような事件の解決は今以上に大変になるだろう。米政府はなるべく早く副総領事の問題を解決させたいはずだ。
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