“1人1台iPad”で変わる小学校教育――ゲーム感覚で教室に活気:公立校でもここまでできる(2/2 ページ)
タブレットを活用した授業を導入する小中学校が増えてきているが、児童全員にiPadを貸与し、DeNAと協力して“iPad授業”を進める公立小学校がある。ゲーム要素を上手く取り入れた学習アプリに児童が夢中になって遊んでいた。
プレゼン、英語学習、SNS――iPadを「フル活用」した授業
なぜ東愛宕小学校はアプリゼミを導入したのか。校長の松田氏は、空き時間の多さを理由として挙げた。「小学校は皆さんが思っているよりも空き時間が多い。休み時間を終えても授業が定刻通りに始まらないときもあるし、健康診断の待ち時間などもある。そういうスキマ時間にアプリで勉強できれば、効率的に学習できる」
東愛宕小学校が展開する“iPad授業”はこれだけではない。例えば小学3年生の国語の授業では、LEGOを使って物語を作るカリキュラムがあるが、ここでもiPadが活躍する。グループで作った造形物をiPadで撮影し、アプリで写真に文字を付け加え、ロイロノートなどのアプリを使ってプレゼンを行う。このほかにも、6年生の授業で英語の絵辞書アプリ「Oxford Picture Dictionary」を使った英語学習を実施したり、3〜6年生にクローズドなSNSを利用させるといった施策もある。こうした取り組みは、同校で独自に編み出したものだ。
「iPadはミラーリングで簡単に画面をテレビに映せるので、プレゼンするのも簡単だ。普段の発表では恥ずかしがっていた子どもたちも、iPadを使うと『発表が楽しい』と積極的にやってくれる。6年生では英語の学習も取り入れているので、英語でプレゼンという授業があってもいい」(松田氏)
数あるタブレットの中でもiPadを導入したのは、操作が直感的に行え、児童向けのアプリが多いためだ。操作を説明しなくても、子どもが勝手に理解し、友達同士で教え合うようで、逆にタブレットに慣れてない教師が、児童に操作を教えてもらうこともあるという。
“1人1台iPad”のために校長が奔走
iPadを使った授業がめざましい効果を上げている同校だが、2014年4月以降は近隣の小学校と統合し、入学者数が激増するため、1人につき1台貸与するというスタイルは難しくなっていくという。現在導入している約70台のiPadのうち、多くは松田氏の尽力で集めたものだ。
松田氏は「学校側も最大限の努力はするが、いずれはBYOD方式――つまり、子ども全員に親がタブレットを買い与え、学校に持ってきてほしいと思っている。保護者の協力が必要になるが、家庭学習を含めて、さらにタブレット活用の幅が広がるはずだ」と話す。iPadの導入開始時は、タブレットを用いた学習に懐疑的な保護者もいたが、授業参観などを重ねるごとに、保護者の反応はよくなっているという。
東愛宕小学校が目指すのはタブレットを使った新しい教育スタイルだ。「先生方にはどの教科においても、できるだけiPadを使うように伝えている。これまでの教育は児童全員に対して一斉に行うものだったが、これからはより個人の習熟に合わせられるものであるべき。はっきり言ってしまえば、もう黒板なんて要らないと思っている。新しい取り組みを試しながら、保護者にも納得してもらえるような効果を検証していく。グローバルな人材を育てられるような教育を実現したい」と松田氏は意気込む。
また、同小学校はメディア露出にも積極的だ。「新しい取り組みはオープンであるべき。取材を嫌がる学校もあるが、われわれは違う。公立校でもここまでできる、というケースを世の中に広め、新しい教育スタイルが普及する起爆剤になれればと思っている」(松田氏)
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