「セウォル号事故」で韓国が日本の支援を断ったのは「反日」だからではない:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
「セウォル号」沈没事故で、韓国政府が日本からの支援を断った。誰がみても「支援を受けたほうがよかった」状況なのに、なぜ韓国政府は受け入れなかったのか。それは「反日だから」という理由ではなく……。
情報がバレバレになる
他国の船が海難事故の救援活動に関わるということは、現場海域へ向かうまでの航路や現場周辺の海岸線や海底の地形などさまざまな情報がバレバレになるということだ。それを嫌って、海保の支援を断ったという可能性である。
いや、旧ソ連とか中国ならいざしらず、「そんなの考え過ぎでしょ」と笑うかもしれないが、実は韓国にしてみれば、このあたりの海域を、旭日旗をなびかせた船にあまりかぎまわれたくないという思いがある。なぜかといえば、「セウォル号」の目的地でもあった済州島が近いからだ。
日本人からすれば、済州島といえば、カジノのあるリゾートアイランドなんて平和なイメージだが、実はここに韓国海軍が前線基地を建設するという計画が進められている。長崎・五島列島までわずか180キロというロケーションにイヤーな予感がしている人も多いだろうが、それだけではない。実はここに中国の空母「遼寧」が入るのではないかという仰天情報が日韓の政府関係者の間で飛び交っているのだ。
ご存じのように今、「反日」を合い言葉に韓国と中国が急接近している。両国は慰安婦問題、戦時徴用工訴訟(戦時中に強制労働させられた韓国の元徴用工が日本企業に損害賠償を求めた訴訟)で足並みをそろえ、中国・ハルビンに韓国の反日ヒーロー・安重根の記念館を建てるなんてコラボも開始している。そんな親密ぶりがゆえ、軍事的にも日米を裏切って、中国にすり寄るのではないかという心配の声があがっているのだ。
実際、韓国は中国と事実上の軍需支援協定(ACSA)を推進している、と多くの韓国メディアが報じている。その一方で日本との軍事関連協定はいずれも韓国側のドタキャンで頓挫しているのは、ご存じのとおりだ。
もちろん、韓国にも中国と手を組むなんてありえないという声も多い。尖閣同様に「済州島も我らの領土アル」と訴えているからだ。そのような不透明な状況のなか、ひとつだけハッキリと言えることは、韓国と中国のパワーバランスを考えた時、「済州島」というカードが非常に重要になってくるということだ。東シナ海の覇権を狙う中国からすれば、あのロケーションはのどから手が出るほど欲しい。実際、過去に日本に「元」が攻めてきた「元寇」でも、済州島は軍事拠点になっている。
つまり、韓国にとって中国につくにしろ、これまで通り米国につくにしろ、「済州島」というのは国家の命運を分ける軍事拠点になるということだ。常識的に考えれば、そんな大事な“切り札”の周辺に日本の巡視船をウロウロさせるわけがない。事実、黄海で作戦中の米軍艦艇から救援のためと現場海域に入ろうとしたヘリ2機も「韓国海軍の承認が得られなかった」という理由で帰還させられている。
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