月980円のオンライン予備校「受験サプリ」は、どのようして生まれたのか:上阪徹が探る、リクルートのリアル(5/6 ページ)
幅広い領域で次々とビジネスを拡大しているリクルート。本連載は、その変化を象徴するキーワードをテーマに、第一線で働く現役社員に聞く。「新規事業」の第3回前編に引き続き、後編をお届けする。
まだ合格実績がない
2013年3月、本格的な事業が始まる。集客は、テレビCMを使った。「オンライン予備校はじまる」というメッセージでインパクトを出せた。
「今、センター試験を受ける人が約55万人。そのうち、『受験サプリ』で過去問をダウンロードしたり、模試を自由に受けられる無料会員が、2013年度の受験生ですでに約30万人。2人に1人は使ってくださっています。ただ、講義動画を視聴する有料会員には簡単にはなってもらえないと思っています。それは、予備校に大事なものがまだ出ていないから。合格実績です。これが出るまでは、少し時間がかかると思っています」
一方で思わぬ成果も生まれた。全国の高校から補習ツールで受験サプリを取り入れたい、という引き合わせが続々と来たのだ。今後は低学年向けの授業も増やしていく。こんなに短期間に手応えが得られるとは思っていなかったという。
「何よりうれしいのは、授業を受けた高校生からの評価が高いことです。講義動画の視聴後に5つ星のレーティングがあるのですが、5点満点中、今の平均が4.8点なんです。ほとんど5点をつけてくださっています」
辛い点数は、通信環境が悪くて途切れた、といったものがほとんどだったという。
「一方で、公教育の立場の人たちからも、いろいろな意見をいただいています。教育をより良くしていくんだということを、もっと発信していかないといけないと思っています。また、学びを解放していくという領域は、実は大学受験に限りません。お金や場所という『不』を解決して学べる領域は、まだまだあると思っています」
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