米球界で失敗した二人のサムライから、私たちが学ぶこと:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)
マー君やダルビッシュが活躍する裏で、期待される活躍ができずに米国で迷走する二人の現役日本人プレーヤーがいる。アスレチックスの中島内野手、カブスの藤川投手。この二人の現状を知り、改めて私たちビジネスパーソンに通じる教訓としよう。
メジャーで不良債権になってしまった、もう一人の日本人プレーヤー
そして米球界で「不良債権」と呼ばれているプレーヤーが、もう一人いる。シカゴ・カブスの藤川球児投手だ。
藤川は日本の阪神タイガースからFAとなり、2012年12月にカブスと2年総額950万ドル(約9億7000万円)で契約。2013年のシーズン開幕当初はチームの正守護神に定着しそうな勢いだったが、5月に受けたMRI検査によって右腕のじん帯断裂が判明。じん帯を修復するトミー・ジョン手術を受け、2014年現在もリハビリを続けているものの、復帰のメドは立っていない。早ければ今夏(2014年夏)にも復帰できるとの見解はあるが、仮にそうなったとしてもその頃はシーズンの佳境。昨季終了時と同様に、現在もナ・リーグ中地区で最下位に沈んでいるカブスにとっては「何をいまさら……」というのが本音である。
そしてアスレチックスが中島にプレイと広告塔の両面で期待をかけていたのと同じように、カブスもまた藤川獲得による大きな経済効果を見込んでいた。
「藤川は阪神タイガースで守護神を務め、絶大な人気を誇っていた。彼の活躍次第では、関西に拠点を置く複数の有名日本企業がカブスとスポンサー契約を結ぼうと動いていたのだ。ところが、これも藤川のケガで破談になってしまった。結果論とはいえ、カブスは藤川の右腕が長年、タイガースで登板過多によっていわゆる勤続疲労を起こしていたのを見極められなかったということだ」(メジャー関係者)
カブス親会社の系列紙『シカゴ・トリビューン』は2013年6月に「カブスはフジカワの戦線離脱によって、本来生み出せるはずだった約2000万ドル(約20億4000万円)の利益を失った」と論じている。カブスのテオ・エプスタインGMはレッドソックスのGM時代に松坂大輔投手(現メッツ)を大金で獲得し、日本企業を巻き込んでそれなりの広告効果を得たうまみを知っているだけに、藤川獲得で「夢よ、もう一度」と考えていたのかもしれない。
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