大井川鐵道に『きかんしゃトーマス』がやってきた本当の理由:杉山淳一の時事日想(6/6 ページ)
ファンの「いつかは日本で」の願いが叶った。2014年7月2日、大井川鐵道が『きかんしゃトーマス』の試乗会を開催。実際の鉄道でトーマスが運行したのは、英国、米国、オーストラリアに続いて4番目。アジアでは初めて実現した。なぜトーマスが日本で走り始めたか。表と裏の理由を明かそう。
この夏はすでに満席だが、キャンセル待ちを狙おう
すでにトーマス列車は今年の運行日がすべて満席だ。大井川鐵道がトーマス列車の運行を発表し、6カ月前から予約受付を開始した時点で、すぐに席は埋まった。試乗会が終わり、報道が解禁されると、大井川鐵道のトーマスはテレビニュースやネットニュースで紹介された。翌日の2014年7月3日になっても大井川鐵道の公式サイトはアクセスが集中してつながりにくい状態だった。
大井川鐵道によると、同社を知らないトーマスファンによる申し込みが多いという。「予約したけど、大井川鐵道はどこにあるんですか」「大井川鐵道に行くにはどうすればいいんですか」という問い合わせも多いらしい。満席かつ新顧客層を取り込めたわけで、大井川鐵道にとっては大成功。キャラクタービジネスの強さだ。
場所を説明すると「そんな遠くには行けない」という声もある。わずかかながら、そうした人々がキャンセルするという。つまり、早々に予約が埋まったトーマス列車にも、わずかながらキャンセル待ちが発生するらしい。大井川鐵道は公式サイトで、予約状況を毎日16時過ぎに更新しているという。現在は×ばかり並んでいるけれど、もし△や○になったらキャンセルが発生したことを示す。キャンセル分については電話でのみ受け付けるとのことだ。
それでもダメだった場合、通常のSL列車には空きがある。客車には冷房がないので、夏は普通列車の電車のほうが快適かもしれない。大井川鐵道で千頭駅に行って、トーマスとヒロの姿を眺めよう。乗車したら機関車は見えないから、トーマスをじっくり見たいなら、トーマス以外の列車で行くという手もある。
大井川鐵道はトーマス列車について、「3年間の夏季」契約をしているという。今年、トラブルがなく無事に成功すれば、あと2年間は大井川鐵道でトーマスに会えるだろう。
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