「ネットダフ屋を締め上げろ」──鉄道業界はなぜ無策なのか:杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)
運行が終了する寝台特急「トワイライトエクスプレス」をはじめ、人気列車の指定券や寝台券は入手しにくい。が、オークションサイトではこれらが高値で取引されている。こんな状態を放置してはいけない。
物価統制令で、買う側も処罰すべきか
指定券のネットオークション転売を根絶するにはどうすればいいか。まずは出品者の手段を奪う方法を考える。早い話、ネットオークションサイトが規約でチケットの出品を禁止すればいい。ネットオークションサイトに「場所を提供するだけで、出品物を一つひとつチェックできない」なんて言わせない。自らのサービス内容と実態を把握できないなら、ネットオークションどころか、サービス業を運営すべきではない。
法的な整備も必要だ。ダフ屋行為禁止条例の「公共の場所における行為」の「公共の場所」の解釈をインターネットにも広げるべきだ。インターネットが「公」であるか否かは、すでに数々の名誉毀損の事例ではっきりしている。名誉毀損は「公然と事実を摘示し、人や企業の名誉を毀損すること」と定義されている。インターネットで名誉毀損が成立するからには、インターネットは「公然と」に含まれていることになる。インターネットが公共の場所なら、ネットオークションも同様である。そうでなければ、日本の法律における「公」の解釈がダブルスタンダードになってしまう。
また、迷惑防止条例などというゆるい制度ではなく、積極的に「物価統制令(関連リンク参照)」を適用すべきだ。物価統制令は戦後に作られた法律で、物価を安定させて経済秩序を安定させる目的があった。要するに闇市根絶のための古い法律だ。しかし現行法である。前述したように、この法律は不当価格による売買を禁じている。売る方だけではなく、買う方も処罰対象だ。チケットのダフ屋行為は経済秩序を乱している。適用は当然である。
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