「ネットダフ屋を締め上げろ」──鉄道業界はなぜ無策なのか:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
運行が終了する寝台特急「トワイライトエクスプレス」をはじめ、人気列車の指定券や寝台券は入手しにくい。が、オークションサイトではこれらが高値で取引されている。こんな状態を放置してはいけない。
特効薬は「買わない」
しかし、何でも法や刑罰で対処というやり方は好ましくない。そうなる前に行動を起こしたい。
鉄道会社は転売チケットを使用禁止すべきだろう。前述のように音楽業界では主催者が率先して取り組みを行うようになってきた。ネットオークションを監視し、転売チケットの乗車を拒否する。返金はしない。これで懐は痛まない。
航空券は不当に高額なオークション出品が少ないように見える。航空券の出品の場合「稀少な席」を指定していないし、座席指定時に氏名が必要だからであろう。鉄道の指定席もこれにならい、本人確認を義務付けたい。予約時に使ったクレジットカードの携帯が必要などの対策を施したらどうか。あるいはきっぷに氏名を印刷し、検札時に身分証の提示を求めるなどか。
そして何よりも、私たちがネットオークションで転売目的のチケットを買わないこと。カネに物を言わせてネットオークションで購入する人もいるだろう。以前、寝台特急を紹介するテレビ番組で「チケットをオークションで入手、なんと××円でした」などとナレーションがあってびっくりした。情けない。みっともない。成金趣味め(編注:ちょっ……汗)。
「NO オークション 私はオークションでチケットを買いません」というマークを作って、心ある鉄道ファンはブログなどで意思表示してみようか。だれも購入しなければ、出品者はチケットを払い戻さざるを得ない。もうからない。
ダフ屋はもうからない。ネットオークションでチケットを買うなんてみっともない。そういう土壌作りが必要である。ネットオークションでのチケット入手を「狡(ズル)い」「カッコ悪い」という雰囲気を作っていこうではないか。
オススメ書籍情報
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