民間企業「アクセルスペース」の人工衛星が、ものすごく安い理由:仕事をしたら“宇宙”に飛んだ(前編)(5/6 ページ)
2013年11月。大学発のベンチャー企業「アクセルスペース」が、民間企業としては世界初となる商用の小型衛星を打ち上げた。大型の人工衛星に比べて、価格はかなり「安い」というが、なぜそんなモノをつくることができたのか。同社の中村友哉CEOに話を聞いた。
人工衛星を真似するのは難しい
中村: 大型の人工衛星って、とにかく高いのですが、それはなぜだと思いますか?
土肥: これまでの話の流れからすれば、高性能の部品を使っているからでは?
中村: それだけではありません。価格の7〜8割は人件費が占めているからなんですよ。1機の大型人工衛星をつくるのには、100〜200人のエンジニアが必要。完成するのに5年〜10年ほどかかるので、人件費だけで莫大なコストになるんですよね。
一方、私たちの会社は、10人以下で1年〜2年ほどで完成させる。なので、大型のモノと違って、人件費を大幅に引き下げることができるんですよね。
土肥: 中村さんたちがつくっている小型の人工衛星が安いということは分かりました。となると、競合他社からコピー商品が出てきそうなのですが。「アクセルスペースの人工衛星って安いよな。ウチでも同じようなモノをつくろうか」といった感じで。
中村: 他社が弊社の人工衛星を真似ることは難しいんですよね。逆に、弊社が他社のモノを真似ることも難しい。
土肥: それはなぜですか。人工衛星を分解すれば「おー、こういう仕組みになっているのか。ウチでもできるじゃないか」ということで、真似することができるのでは?
中村: 人工衛星は量産品ではないので、基本的には分解することができません。もし、分解することができても真似することは難しいでしょう。
土肥: それはなぜですか?
中村: 設計図を見せてもらえれば、同じような人工衛星をつくることはできます。しかし、全く同じモノはつくることができないんですよ。というのも、“なぜこういう設計になっているのか”ということが大切なのですが、設計図ではそれを読みとることができません。
例えば、この部品はなぜ黒色をしているのか。設計した人はその意図が明確にあるのですが、設計図を見た第三者はそれを理解することが難しい。設計図を見て「お、このアイデアは面白いな」ということはあるかもしれませんが、だからといってそのまま取り入れことはものすごく難しい世界なんですよ。
土肥: なるほど。
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