もうiPhone 3Gには戻れない──iPhone 3GSは「iPhoneの世界」を加速する(3/3 ページ)
iPhone 3GとiPhone 3GSは、外観に大きな違いがないこともあり、「今回は見送りでいいかも」と思っている読者も多いだろう。しかし、一度iPhone 3GSの「スピード」に触れてしまうと、もうiPhone 3Gには戻れなくなると感じた。
変わらぬ「iPhone流のおもてなし」
ここまでiPhone 3GSの機能強化ポイントを中心に見てきたが、それ以外にもiPhone 3Gに比べて新しくなった部分は数多くある。
例えば、箱だ。iPhoneでは箱を開けるときから、ユーザーを喜ばせる「ブランド体験」を提供するが、その箱が先代よりコンパクトになった。これは外装や流通にかかる環境負荷を軽減するための取り組みだという。
また、分かりやすい部分では、標準で付属するイヤフォンマイクも変更されている。新しいイヤフォンマイクは、従来からあるスイッチ部分にボリュームコントロール用のスイッチが追加されており、使い勝手が向上した。iPhone 3GSでは音楽プレーヤーや電話だけでなく、音声コントロールでもマイクを使うことになるので、イヤフォンマイクの高機能化はありがたいところだろう。
そして何より高く評価できるのは、iPhone 3GSへの進化で、フォルムやデザインが大きく変わらなかったことだ。Appleによるとこれは「iPhone 3G用に作られた魅力的なアクセサリーやケースがそのまま使えるようにするため」の配慮だという。ハードウェア的には高速化を筆頭に大きな進化を遂げているが、それでもサイズやデザインを堅持したのは、Apple流の心配りとおもてなしと言える。
iPhone 3Gには後戻りできない
大幅なデザイン変更や仕様の変更がなかったこともあり、iPhone 3GSは「iPhone 3Gの小規模なマイナーバージョンアップ」と見られやすい。しかし、iPhone 3GSを実際に使うと、それがまったくの誤解であったことが分かる。iPhone 3GSは確かにiPhone 3Gの延長線上にあるが、その中身は大幅に変わっており、使い心地の変化や得られるメリットはとても大きい。日本語環境だとその実感はなおさらだ。iPhone 3GSは、キープコンセプトで行われたフルモデルチェンジと言ってもいいだろう。
iPhone 3GからiPhone 3GSへの進化。これを体験して筆者が「似ているな」と思ったのが、分野は異なるが、トヨタの2代目プリウスから3代目プリウスへの進化である。あちらも完成度の高い優れた先代モデルからのキープコンセプトで大きく進化し、そのユーザー体験が洗練されていた。プリウスとiPhoneのどちらにも共通するのは、そのスタート時から時代を先取りした優れた基本設計を持つこと。そして、イノベーション(革新性)を押しつけるのではなく、イノベーションを人々に使いやすく・分かりやすい製品として、誰でも手が届く存在になっていることだ。だから、どちらも多くの人を惹きつけて、世界を変える力になっている。
iPhone OS 3.0の登場を受けて、iPhoneを中心にしたビジネスやサービスの輪は急速に拡大している。その中でiPhone 3GSは、この世界の広がりを強く後押しする「加速装置」としての役割を果たすだろう。これから新たにiPhoneを手にする多くの新規ユーザー、そして既存ユーザーにとっても、iPhone 3GSはとても魅力的な新モデルになる。買う買わないは別として、店頭でいちど試してみる価値はある。
iPhone 3GSがどれだけ多くの人を感動させられるか。6月26日を迎えるのが、今から楽しみである。
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