新型GALAXYとXperiaの魅力/auだけじゃないiOS版「LISMO unlimited」/「PayPal Here」の戦略:石野純也のMobile Eye(4月30日~5月11日)(2/2 ページ)
GW中に「GALAXY S III」、GW明けに「Xperia GX/SX」がメーカーから発表され、早くも夏モデルの足音が近づいてきた。ソフトバンクとPayPalは合弁会社を設立し、「PayPal Here」を導入する。また、KDDIの定額音楽配信サービス「LISMO unlimited」のiOS版も登場した。
ソフトバンクとPayPalが合弁会社を設立、「PayPal Here」などを導入へ
ソフトバンクは9日に、PayPalとの提携を発表、10億円ずつ出資して合弁会社を設立する。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEO、孫正義氏によると「日本の決済市場を変える、そういう目的のために作る会社」とのこと。iPhoneやAndroidスマートフォンにアタッチメントを取りつけてクレジットカードを読み取る「PayPal Here」も日本に導入する。
PayPal Hereとは、アタッチメントとアプリが一体となったソリューションのこと。従来のようにクレジットカード専用の読み取り機器が不要となり、「スマートフォンを持ってさえいえれば、アタッチメントをイヤフォンジャックにプチュっと挿すだけでクレジットカードリーダーになる」(孫氏)という手軽さが特徴だ。サインやカード利用控えの発行も、すべてスマートフォン上で行う。アタッチメントはソフトバンクの法人営業が「徹底的に配りまくる」(孫氏)ほか、ショップでも1200円で販売される。手数料は5%。一般的なクレジットカード会社は取引先の業態や職種によって手数料を変えているため一概には比較できないが、平均すると同程度かより安くなるように設定されているようだ。孫氏が「100万、200万店舗まで増やしていく」と意気込むように、今までクレジットカード決済の導入をためらっていた中小店舗にまでPayPal Hereを広げていく構えだ。
さらに、“顔パス”で決済を行う「チェックイン」機能も提供する。ユーザー側のスマートフォンには位置情報に基づき、近隣のPayPal対応店舗を表示。アプリでチェックインすることで、店舗側のスマートフォンのリストにそのユーザーが表示される。後は、店員があらかじめ入力しておいたメニューを選び、支払いを完了させるという仕組みだ。ユーザーの照合は、顔写真の目視で行う。金額を確認してから明示的に支払う流れでないため少々不安は残るが、「不正な取引があった場合、返金処理で対応していく」(会場の説明員)とのこと。返金があるとはいえ、認証の仕組み上、初めて訪れた店舗や大規模店では使いづらい。「麻薬や銃など、明らかに違法なものを販売する店舗には、そもそもアカウントを発行しない」(同)という措置も取られる。
なじみの店での支払いなどがスムーズになりそうだが、現金やクレジットカードを提示するという従来の方法から大きく“所作”が変わるソリューションのため、PayPal側としてもあくまでまずアタッチメントありきと考えているようだ。まず、アタッチメントを普及させ、PayPalによるクレジットカード支払いを普及させる。その次に、チェックイン機能によるオンライン上での支払いを実現させるという戦略があるようだ。
一方で、日本ではおサイフケータイの利用環境も広がっており、対応するリーダー/ライターをすでに設置している店舗も少なくない。特にドコモが推進するiDは、タクシーや自動販売機など、従来の店舗の概念にとどまらない幅広いシーンで利用できる。こうしたおサイフケータイとの競合関係について問われた孫氏は、「おサイフケータイは、そもそも使う金額が大変少額で、お金を追加するのが非常に面倒。しかも端末を乗り換えると、残金が非常に移しにくいなどの問題点があり、現実にはあまり使われていないのではないか」とコメント。その上で「ガラパゴス的に発生したおサイフケータイは一時的なビジネスモデルだったと、5年後、10年後に言われるようになる」とした。
これに対して、PayPal Hereはあくまで決済端末の代わりになるもので、電子マネーやクーポンの役割を担うおサイフケータイと直接競合するものではないというのが筆者の見解だ。また、確かに孫氏が指摘するような機種変更の問題などはあるが、ケータイをかざして決済を行うおサイフケータイのアイディアはNFCとして世界に広がっており、米国でもすでにGoogleが類似サービスを開始している。発想自体は決して“ガラパゴス”ではないということをつけ加えておきたい。事実、会場の説明員もPayPal Hereのアタッチメントが将来的にNFCに対応する可能性は十分ありえると話していた。アタッチメントにスマートフォンをかざせば支払いが完了するというのは、ユーザーにとっても店舗にとっても、時間の節約や手間の軽減、管理の効率化といったメリットの多い方式だと思う。ソフトバンクモバイルがおサイフケータイ対応スマートフォンを販売していることもあり、ソフトバンクにはこのような将来の青写真まで描いてほしかった。
関連記事
- 「石野純也のMobile Eye」バックナンバー
日本でも発売予定:4.8インチスーパー有機EL搭載、LTE版も登場――Samsung電子が「GALAXY S III」を発表
Samsung電子が新型のAndroidスマートフォン「GALAXY S III」を発表した。HDサイズの4.8インチスーパー有機ELやAndroid 4.0を搭載。音声認識を利用した「S Voice」やNFCを利用した「S Beam」も新たに採用した。ソフトウェアも大幅に進化――写真で見る「GALAXY S III」の外観と新機能
Samsung電子の新型スマートフォン「GALAXY S III」が発表された。日本では今夏にLTE版の発売が予定されている。ハードウェア性能だけでなく、ソフトウェアも大きく進化している同モデルの見どころをお伝えする。Samsung、「GALAXY S III」を発表 日本でも今夏にLTE版を発売
Android 4.0スマートフォン「Samsung GALAXY S III」は新プロセッサ「Exynos 4 Quad」を搭載し、ディスプレイは4.8インチ。日本ではLTEモデルがこの夏登場する。2012年夏以降に日本投入:ソニーモバイル、LTE対応スマートフォン「Xperia GX」「Xperia SX」を発表
日本では「Xperia NX」と「Xperia acro HD」が発売されて間もないが、早くも新型のXperiaがソニーモバイルから発表された。アーク形状を採用したLTEスマホ「Xperia GX」と、小型ボディに日本向けサービスを詰め込んだLTEスマホ「Xperia SX」が夏以降に発売される。ドコモ、5月16日に新製品・新サービスの発表会を開催
ドコモは、5月16日に開催する新製品発表会の予告サイトをオープンさせた。2012年夏モデルの新端末に加え、新サービスも発表される。“顔パス”で決済も:スマホで簡単にカード決済できる「PayPal Here」、7月に本格導入
ソフトバンクと米PayPalが合弁会社「PayPal Japan」を設立し、リアル店舗での新しい決済サービス「PayPal Here」を開始する。これまでは利用店舗が限られていたカード決済が、スマートフォンとカードリーダーを利用することで容易になる。KDDI、定額音楽配信サービス「LISMO unlimited」のiPhone版を提供
月額1480円で約100万曲が聴き放題となるサービス「LISMO unlimited」が、iOS搭載端末でも利用可能になった。月額1480円で音楽を聞き放題――au、スマホ向け定額音楽配信サービス「LISMO unlimited」
月額1480円で、クラウド上の約100万曲を聞き放題――。KDDIがauスマートフォン向け定額制音楽配信サービス「LISMO unlimited powered by レコチョク」を提供する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.