孫社長が「UQへの2.5GHz割り当て」に猛抗議――「泣き寝入りはしない。行政訴訟で断固戦う」:石川温のスマホ業界新聞(2/4 ページ)
7月26日の電波監理審議会で、2.5GHz帯の新たな周波数をUQに割り当てるとの答申が出たが、これに異を唱えたのが、ソフトバンクの孫社長と宮川潤一CTO。総務省の廊下で行われた囲み取材で、2人の「恨み節」を聞くことができた。
―― 孫社長をもってして、なぜこうした状況が読めなかったのでしょうか。
孫社長 読めない? 疑ってはいた。まさか彼らが20MHzで申請してくるとは。どうして、そこまで強気なんだ。何を持って強気なのか。我々も迷った。20MHzを申請したら、なんぼなんでも欲張りすぎだ。常識の範囲でイコールフッティングだと。
とはいっても、彼らは30MHzが使えていて、我々は20MHzしか使えていない。制限バンドなので。それでも半歩下がって、10MHzと10MHzで割り当てられれば、イコールフッティングに近いかと、自分たちで慰め合いながら、申請した。
我々が20MHzといったら、欲張りすぎだと言われるリスクを考えて、10MHzにした。彼らが20MHzで申請して突入したという時点で、これはひょっとしたら、出来レースで自信があるのかと疑った。まさかね、なんぼなんでもそこまでひどくないだろうと信じたかった。審査の採点について、主観が入るとは言え、フェアな評価になると信じたかった。性善説として。
だけど、結果をみたら、あまりにアンフェアなので、不服を申請するのは当然。案の定、メールの1行のなかにそれなりの影響を与えるような関係があったとしたら、その時点では許されない罪になる。それは誰が見てもおかしい。
―― 情報公開請求も行うのですか。
孫社長 5時までに受付が終わるというので、明日改めて行う。少なくとも、情報公開も請求しますと申し入れた。
―― 新しい周波数帯がUQに与えられることで、御社としては相当、焦っているのではないか。
孫社長 焦るというか不利だと言うこと。2.5GHzのTD-LTEバンドというのは、買収したスプリントの100%子会社のクリアワイヤを争ってどれだけ苦労して獲得したか。
あれも法に基づき、少数株主に対するフェアさも維持しながら、現役の経営陣と取引するだけでなく、厳正のガバナンスルールに基づいて、必死の思いで獲得した。
そのバンドと、今回の2.5GHzのバンドは同一バンドですから、同一の端末が使えるようになる。我々にとっては重要なバンド。それがまさか、50MHz対30MHzという振り分けがされると思わなかった。思いたくもなかった。
実際、今日現在は50MHz対20MHzですから。表面的には周波数を渡すのは彼らは得意。でも、我々のバンドはいっつも制限付き。いっつも制限付きなんです。形式だけ、バンドトータルでこんなにあると言われるが、いっつも制限付き。
その制限がついている間にどれだけ競争が不利になると思いますか。どれだけ、追加の設備投資が必要になってくるか。それをしないとお客様には言い訳できない。不利な条件のなかで戦ってきている。同時に申請したときに、KDDIに勝ったときある?
宮川CTO ない。
孫社長 全敗。言いたくないけど全敗。(前の2.5GHz割り当ても)UQとウィルコム、どちらもKDDIグループ。
宮川CTO 900MHzの時だけガス抜きさせてもらったけど。
孫社長 900MHzの時は制限付きで5MHz×5MHzをもらっている。700MHzの時は申請するなと言われた。事実上。彼らは800MHzを15MHz×15MHzを持っていて、さらに700MHzでしょ。我々は5MHz×5MHzしか使えない制限付きを渡されて、『お前には900MHzを渡したばかりだから、まさか次の700MHzを申請するわけないよな』と念を押された。
うーんと耐えに耐えて仕方ないと。もらった5MHz×5MHzで爪に火をともしながらがんばるかと言って、それでもお客様には言い訳を言わずに、日本で最大の基地局数を短期間につくった。それだけの努力をしているのにも関わらず、またしても全敗かと。
今回もこちらは10MHz、片っぽは20MHzを申請して、全敗。
―― 900MHzを獲ったときは700MHzには申請しないというのは、初めから出ていた話だが。
孫社長 初めから出ていると言ったって、誰がそんな風に決めたんですか。それはいつも許認可を与える立場の人間が、上から目線でルールをつくるんです。それに毎回、逆らっていると、いよいよ我々ももらえなくなるんです。いろんな理屈を上手に書かれて、我々だって、これだけ不服を上げているのは決死の覚悟。これを出すと言うことは、みなさんも想像できるように次からいろんな面で不利になる。かつて、行政訴訟したときは、僕はここに立ち入り禁止になった。アポが一切入らなかった。
江戸の敵を長崎で討つ、じゃないけれど、わかっていて、不服を出すと言うことは、これでいいのかという思いなんです。いつも制限付き、いつもちょっと少なく出される。
―― 今回も審査基準が出た段階で不利になるとわかっていたわけで。MVNO項目や既存の周波数の利用状況は不利だというのは明らかであり、「こんな基準では戦えません」と異議を申し立てればよかったのではないか。
宮川CTO パブコメの話でしょ。10MHzと10MHzという話を総務省にお願いしに行ったところ、『両方共に分け合える体制をつくりました。あとはお願いしますね。これ以上騒がないでくださいね』と言われたわけですから。全部喋っていいなら、いつかはしゃべりますが、いまは裁判をやらないといけないですから(これ以上喋りません)。
孫社長 そういうのはね、裁判の過程で明らかにすればいいんですよ。最初からこういうルールと言われても、点数をつけるのが主観であれば仕方ない。技術の面においては、我々が優れていると思っている。
彼らは事実上のTD-LTEをやったことがないわけでしょ。我々はTD-LTEをやっているわけですよ、まぁ、AXGPと呼べと言われているので呼んでますが。WiMAX2と言っているけど、どっちもTD-LTEなんです。
それはご存じですよね、実態は。どっちもTD-LTEなんです。どっちがすぐれていますか、経験値はどっちが上かといえば、我々なんです。だから、それは得点1で着くと思っている。負ける点もあれば、勝つ点もある。最終的には同点になって、同点であれば、指針によって、10MHzで申請している方になるとあるわけでしょ。
それでUQが20MHzで出すということがあとでわかって、それは相当、おかしなことになっているねということは、うすうす疑いだした。
たったいくつかの項目で評価されるプロセス自体をそろそろ改めるべきではないか。
―― オークション導入には賛成ですか。
孫社長 こんな風になるくらいだったら、まだオークションのほうが正々堂々としていると思いますよ、本当に。せめてイコールフッティングになるからね。こんな密室の裁量行政が続くのであれば(賛成)。
オークションは、資金量がしっかりあるところが常に勝ち続けるし、新規参入が不利になるし、マイナス点もあるが、こんな付け方をされるなら、オークションのほうがまし。セカンドベスト。そっちのほうがベターだという考えに変わるかもしれない。
―― 事前に10MHzを割り当てるという話は密室ではないのか。さきほど、総務省に確認したら、そんなことはやらないと言っていたが。
宮川CTO 誤解があるようなので、きちっと説明させてください。10MHzと10MHzで握りましょうね、という話は一切ない。密室はない。総務省はそういうのはよくわかっている。絶対やらない。この国はそういう国です。これまでの電波もそうです。
あなたたちはどこ(の周波数帯)を要求しますかと聞かれて、僕はここです、僕はこっちです。こちら側に行きたいです。そうですよね、ここに入るとイコールフッティングですよね、という誘導はします。それは常にします。900MHzの時もそう。700MHzの時も、昔の2.5MHzのときでも、いつでもやります。
でも、密室でやるなんて、彼らはプロなので絶対にやりません。
僕は担当とのやりとりをずっとやっているので、やりとりのなかで、相手も10MHzできているのだな、と理解しますよ。僕はギリギリで20MHzで行くべきでしょうかと聞きに行った。しかし、相手は10MHzでやりますよね、と言われて帰ってきた。
現場はあうんでやりあう。そういうこと。
―― 請求をして、黒い結果が出て、勝った事例というのはあるのでしょうか。
孫社長 そもそも、みんな泣き寝入りをしてしまうのではないか。行政訴訟をしていない。行政訴訟した事例が何件ありますか。我々ぐらいなもの。
我々は業界の関連団体から天下りを一切受けない。ボーダフォンを買ったときには、天下りの人がいたが帰ってもらった。イー・アクセスにも天下りの人間がいたが帰ってもらった。(日本)テレコムにいたが、即刻、帰ってもらった。
僕はあとで疑われること、アンフェアだと思われることはしたくない。
宮川CTO アメリカは天下りがいたら、電波をくれないからね。日本もそうすべきだ。
―― 今回、周波数を獲得できなかったことによって、ソフトバンクやスプリントのユーザーにとって、影響はあるのか。
孫社長 ものすごく不利になる。4000万ユーザーの方々に対して、大変、不利な状況になる。20MHzと50MHzでは速度や接続率でめちゃくちゃ不利になる。
ソフトバンクのためというのはある。株主、社員のためでもあるが、それ以上に4000万ユーザーに迷惑をかける。最先端の電波、技術でつながることを求めている。
それに対して、不服もいわずに泣き寝入りしていたら、我々を信じて、契約してくれているユーザーに対して、めちゃくちゃ申し訳ない。東日本大震災の時に、プラチナバンドを持っていないから、電波が届かずに被害者を増やしたかも知れないと思って、ものすごく胸を痛めている。
電波をもらっていればいいじゃないかというのがユーザーの気持ち。ユーザーのためにも、不服は不服だと戦わないと。真剣にいかないと腰抜けになる。
―― スプリントの成長戦略に影響はあるのか。
孫社長 直接ではないが、ソフトバンクでは僕以外の一般株主の半分が外国人株主。アメリカの機関投資家もたくさん入っている。彼らが財産権を奪われたとソフトバンクの価値に影響が出る。
これに対して、不服を申し入れないと、代表訴訟ですよ。何をしているんだと。代表訴訟を受けるんですよ。国際的な基準で見れば、おかしいでしょ。癒着があったと疑っているのであれば、正式な手続きを踏む必要がある。一般株主からすれば当然の思い。
ガラパゴス的な行政なあり方を飲み込むわけにいかない。
―― 今日は総務省の方に会って抗議はされたのですか。
宮川CTO 今日はしてないです。
孫社長 お客さんを待たせている。すいません(と、ここで退席)。
宮川CTO 今日はやりとりしてないです。昨日、要望書を提出したのだが、回答義務が今日で、審議会のなかで議論されたはずなのですが、記者さんたちにはそういった話はされましたか。
記者 公開ヒヤリングは、事前に確認しているから、やらないということでした。
宮川CTO そりゃないね。前回の2.5GHz帯割り当ての時の記録を見てみたのですが、4社いたから揉めた。あのときは、プロセス的に公開ヒヤリングをやってくれといったが、事業者が入ると、事業者が叩き合うので、できないと言われた。お互いデータを見せる必要もあるので、断られた。
しかし、委員会のメンバーだけに事業者が呼ばれてちょっとずつプレゼンをする時間はもらえた。それでプロセスの時間が延びた。
そういうガス抜きがあったが、それはそれで落ちてしまった。
今回も、ヒヤリングをお願いしたが、即答で嫌だと言われた。昨日の段階でリーク、リークなのかスクープなのか知らないが、その前の夕方にサマリーシート、短冊(提出した計画書の概要が書かれたもの)をこれでいいですかとヒヤリングされて、足りないと言われた箇所を返したが、それも反映されていない。
それで点数が違うのであれば、指摘させてもらう。
その短冊で議論をするのであれば、たった2時間の電監審で、こんなにおかしいと言っている事業者がいるのに、一方的に決めるというのは、それはいくらんでも上から目線なんじゃないですか。
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2.5GHz帯/20MHz幅の追加割当がUQコミュニケーションズに決まった。
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