LINE電話「電話番号偽装」を試してみた━━サービス多角化でマネタイズを急ぐLINEに最良の相手とは:石川温のスマホ業界新聞
Android版「LINE電話」が公開され、電話番号を偽装できることが問題になっている。次々と新サービスを発表するLINEの将来を考えてみた。
とかく話題のLINE電話を早速使ってみた。
LINE電話は今のところはiPhoneには非対応。普段、LINEはiPhone5sで使っていることもあり、まずはGALAXY Note3にインストールしてあるAndroidアプリを起動し、ログインをし直す。ここでSMS認証などが必要となるが、もちろん番号は普段使っているiPhoneの番号で対応しておく。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年3月22日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
LINE電話で必要なのがコールクレジットのチャージだ。自分は30日プラン、「固定電話と携帯電話への通話」を選び390円をクレジットカードで支払った。もちろん「LINEプリペイドカード」にも対応している。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなどで販売されているが、LINE電話を契機に、プリペイドカードが販売枚数を伸ばす可能性もありそうだ。
実際に週末の秋葉原、混雑する家電量販店の中で、LTE網に接続して、携帯電話宛てにかけてみたが、音質的にも特に気になることなく、普通に使えてしまった。ケータイwatchでは「サーッというホワイトノイズが気になる」との指摘があったが、外出先で周りがうるさいと気にならないのかも知れない。電話を受け取った相手も、いつも通りの着信に見えたようで、特に変わりなく会話が始まった。相手に同じ番号が伝わり、普通に話せるというのはとても便利だと実感した。個人的には海外から国内にかけるときにはとても重宝するのではないか、と期待している。
LINE電話を使ってまず気になったのが、発信者番号通知だ。NTTドコモ宛には「通知不可能」などになるのだが、au、ソフトバンク宛にはきちんと自分の番号が通知される。しかも、最初の設定でiPhone5sの電話番号を入力したせいか、GALAXY Note3からLINE電話を発信したにも関わらず、iPhone5sで普段使っている電話番号が相手に通知されてしまった。
ネット上で指摘されている番号偽装が、誰でも簡単にできてしまうのだった。
これでは、LINE電話を設定した電話番号を他の端末で使えるようにしておき、もともとの電話番号は解約してしまって、犯罪に活用するということもできてしまうのではないか。
ここ最近、子どもが巻き込まれる犯罪で必ず「LINEを介して連絡」といったように、メディアでやたらとLINEが犯罪の温床といったような報道がされているが、これは「交通事故が道路で起こった」と同じ表現であり、事故が発生したからと言って、道路が悪いわけではない。本来ならば、犯罪が発生したことで、LINEが攻められる立場ではないはずなのだが、電話番号偽装の件は、LINEが自ら過ちを犯しているような気がしてならない。なぜ、LINEは率先して、犯罪の温床になるような仕組み作りをしてしまっているのか。残念でならない。
今後、LINEは早急に対応が求められるのではないか。このままでは、NTTドコモと同様にKDDIやソフトバンクモバイルも、着信側を「一斉非通知」という対応にせざるを得なくなってくる。そうなれば、LINE電話の優位性も失われてしまうはずだ。
ここ最近のLINEの動向を見て、あるキャリア関係者は「マネタイズを焦っているのではないか」と指摘する。
LINEは、今週発表した「LINEキッズ動画」だけでなく「LINEモール」「LINEミュージック」など次々とサービスを発表しており、とにかく多角化を焦っている感が強い。「LINEミュージック」は内容を発表しているものの、サービス開始の具体的な日程は明らかにされていないし、「LINEキッズ動画」はアップルの認証が降りていないにもかかわらず、記者会見を大々的に開催した(タレントの都合が優先されたのだろう)。LINE電話もiOSアプリはまだ準備できていないにもかかわらず、Android版を先行公開といったように、とにかく、出せるものはいち早く出してしまおうという焦りを感じているようにも思える。
キャリア関係者からすると「LINEの節操のないサービス多角化路線はマネタイズに苦労している裏返しだ。ライトユーザーが増えれば、それだけ設備投資がかかるだけに、今が正念場なのではないか」と見えるようだ。
LINEとしては、株式上場を前に、サービスを拡充し、少しでもマネタイズを成功させ、できるだけ企業価値を上げておこうという狙いなのかも知れない。
ただ、やはり気になるのが、ソフトバンクグループからの買収だ。確かに、孫社長としては「情報革命」を進める上で、LINEはのどから手が出るほどに欲しい企業だろう。ソフトバンクモバイルやSprintで、音声通話収入が頭打ちになるとしている中、いっそ、IP電話ベースのLINEを導入してしまった方が、コスト的に有利に働く。ライバルがVoLTEを訴求してくる中、「うちはLINEだ」と言い切ってしまえば、VoLTEに投資することなく、充分に先進的なイメージで戦うことができるはずだ。
もうひとつソフトバンクグループにとってLINEを欲しがる理由は、コンテンツ連携だ。Yahoo!とLINEが組めば、LINEがやりたがっているサービス拡充も、Yahoo!が持つコンテンツを活用して実現できる。Yahoo!としても「スマホシフト」「爆速」と言っている割には、スマホで目立った成果を出せていない中、LINEと組めれば一気にスマホシフトを進めることができる。
LINEにとってみれば、ソフトバンクではなく、Yahoo!に買収されれば、他のキャリアとの中立性も保つことができる。まさにLINEはソフトバンクと言うよりもYahoo!と組むことで、シナジーが生まれてくるだろう。
今後、LINE単独で成長を目指すのか、それともソフトバンクグループと組むのか。LINEの経営陣がどういった判断を下すかで、LINEの将来は大きく変わるだろう。
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