アップルが「Apple SIM」でデータ通信サービスも掌握か ━━キャリアと端末、ユーザーの関係が一変する恐れも:石川温のスマホ業界新聞
Appleから新型iPadやiMacの発表がされたが、注目すべきは「Apple SIM」の存在。国内向け端末には内蔵されていないが、今後の動きに注目が集まる。
10月16日(現地時間)、アップルが「iPad Air 2」「iPad mini 3」を発表した。iPad Air 2は6.5ミリという薄さという点に驚かされたが、その他においては、概ね予想通りの発表だったように思う。
しかし、我々の予想を超えてきたのが「Apple SIM」の存在だ。発表会では特に触れられなかったが、アメリカとイギリスで販売されるデバイスに関しては、Apple SIMカードが内蔵され、ユーザーはiPadを起動後、好きなキャリア、料金プランや契約期間を選べるようになるという。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年10月18日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
また、Apple SIMカードは、アップルストアでも販売され、日本からの旅行客でも購入でき、現地の契約が利用できるようになるとのことだった。
アメリカではAT&T、スプリント、T-Mobile US、イギリスではEEが対象のようだが、いずれは対象国やキャリアが拡大していくのだろう。是非とも日本のキャリアでも使えるようになって欲しいものだ。
アメリカの報道では「ベライゾンで使いたい場合はベライゾンのSIMカードを挿入すれば使える」とあるので、完全なソフトウェア対応ではなく、SIMカードを用いたサービスと思われる。NTTドコモがサービスを開始している「eSIM」に近い形といえそうだ。
これまで、日本から海外に行った際には、現地でSIMカードを購入し、プリペイド契約するという手間を毎回、惜しまずにやってきたが、Apple SIMカードが出てくれば、そうした煩わしさから解消されつつ、安価な料金プランでiPadを使えるようになるのはとてもありがたいことだ。
ただ、アップルがこのような取り組みを始めたと言うことで、今後、業界には様々な影響が出てくるものと思われる。
例えば、これが「アップルがiPad上でデータ通信契約を販売している」という図式ならば、この仕組みを経由した契約は、今後、アップルがキャリアから手数料やデータ通信料金の一部を徴収する、という取り決めをすることも可能になってくるだろう。
また、同じ画面上で複数のキャリアが選べると言うことは、キャリア間の競争が過熱し、値下げやキャンペーンが盛り上がる可能性も考えられる。
iPadで手軽に使える料金プランがキャリアから出てくるようになれば、日本においては、ここ最近、ようやく盛り上がりを見せているMVNOにとっては逆風にもなりかねない。
もし、アップルが「Apple SIMに対応したキャリアしか使わせない」という方針になってしまえば、SIMフリーであっても、他のMVNOが使えなくなるという恐れも出てくるだろう。
現在、総務省がSIMフリー市場を盛り上げようと躍起になっているが、アップルの意向次第では総務省の努力は水泡に帰す可能性もある。
キャリアとメーカー、そしてユーザーの契約体系までも一般化させる可能性を秘めたApple SIM。今後、いろいろと面白い展開が期待できそうだ。
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